第47話



汗でぬれた髪を軽く持ち上げ、宗一さんは首筋を甘噛みした。


「……最高な夜がまた更新された。ありがとう、白希」


大きな掌が、俺の熱と、形を確かめる。これはきっと朝まで続く。

「お礼を言うのは俺の方です」

膝立ちし、彼の唇を塞いだ。

「宗一さんといると、幸せになろう、って本気で思えます。ちょっと前なら、そんなこと考えもしなかった」

左手の薬指をそっと撫でながら、彼の前に正座する。

「でも俺ひとりではなくて……絶対、貴方と一緒に幸せになりたい」

「……うん」

世界から外れて生きていた自分と、自ら世界を遠ざけていた彼。対象的な生き方をしていたはずなのに、どうしようもなく惹かれ合った。


もし本当に神様がいるなら、彼と会わせてくれたことにお礼を言いたい。


「私は生涯にわたって君を愛すと誓う」


白いシーツが一斉に宙に舞い上がる。途端に真っ白な布に四方を覆われ、別世界のような景色に狼狽えた。

最初は窓から風が入ってきたのかと思ったけど、そうじゃない。宗一さんの力だ。


シーツの波が自分達を包み込む。まるで空に浮いているような錯覚がした。いつまでも浮かび上がって、落ちない白に手を伸ばす。

「君が私に熱い愛をたくさん届けてくれたようにね」

「……っ」

上手く言えないけど、胸の中が猛烈に熱くなった。

気が付いたら前に傾き、……彼の胸に飛び込んでいた。

以前の自分なら絶対にできなかったことが、毎日一つずつ増えている。その感動を与えてくれたのは宗一さんだ。


「宗一さん。あの、そのっ……あっ」

「あ?」

「あっ……愛してます!」


情けないけど、最後の方は声が震えてしまった。

でも、今度こそ告げた。それなりに大きい声で、はっかりと。


「この先何があっても貴方を愛すると誓います」


この前に見たドラマの受け売りになってしまったが、大胆不敵なプロポーズを突きつけた。


宗一さんは微笑みこそ消さなかったけど、ゆっくり頷き、周りに浮かんだスーツを静かに降ろした。最後に落ちてきた一枚を受け止め、俺の頭の上に被せる。


「ここに神父がいたら、誓いのキスを言い渡すだろうね」

「あははっ」


まるでごっこ遊びだ。子どもみたいだけど、それが最高に楽しくて、彼と一緒に笑った。

もう既に幸せだから、これ以上の幸せを手に入れたらおかしくなってしまう気がする。


そう言うと、彼は「それでいいよ」、と答えた。

「私も同じだ」

彼の鮮やかな瞳に、自分の顔が映る。

呆れてしまうほど希望に満ちて、彼に惚れてる自分がいる。


自覚したところで変われる気もしない。やっぱり俺は、この人が大好きなんだ。


嬉しいことばかりだ。

怖いことしかなかった夜が、彼と出逢ってからは何物にも代えがたい、大切な思い出になっていく。


この夜も鍵つきの宝箱にそっと仕舞った。いつか心が揺れそうになったとき、すぐに取り出せるように。



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