第3話 触覚

何かに触れれば感覚が残る。それが、身体としては普通のことだ。

 けれど、今日の私は少し違っていた。朝に持ったコップも、出勤のために握ったドアノブも、触れた感覚が残らない。


 足も同じだった。出勤のために歩いているのに、歩道の感触が分からない。


 立ち止まっても、地面は返事をしなかった。体は前に進み、次の一歩を出す準備だけが残っている。 


 それでも、身体は進んでいた。

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