ヴィラン・クイーンズ

数多未

プロローグ

ードンー

鈍い音と共に鳴り響く悲鳴。鮮明な血の色が脳裏に焼き付く。気づいた時にはもう遅かった。あの子は…もう虫の息だった。滴る雨が、絶望を引き立てる。

「…仕方がないわね。あなたが死んじゃったら、もう何

 の意味もないもの」

ポツリと呟くと、私は人々の前に姿を表した。感情と理性の葛藤の末に、私は…。

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20XX年5月13日、月に大きな変化が起きた。表面は紅に染まり、無数の未確認生物が月から舞い降りた。地球上の生物によく似たものから、様々な生物が溶けて混じり合ったようなものまで多種多様なそれは、我々に危害を加えるわけでもなく、ただそこに存在していた。街中を我が物顔で歩くそれらは、我々が混乱する引き金となるには十分なものだった。政府は予想できるはずもないその事態を学者に丸投げしたが、いくら未確認生物が攻撃してこないからといって、安全な補償などどこにもない。学者は皆月に行くことを拒んだ。見かねた政府は月へ行かせる「候補者」を30人十年ごとにくじ引きで選出すると宣言した。その一週間後、くじ引きは実行された。当然抵抗する者がほとんどだったが、政府に逆らえるはずもなく、30人が月に送り込まれた。だが誰一人として戻ってこなかった。当然情報も得られず、ただ時間だけが過ぎていった。それから何度も候補者が送り込まれたが、何年経てど状況はわからなかった。制度ができて100年、これから何が起こるのか。それともやはり、何も変わらないのか。それは、神にしか分からないのだろう。

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