チロルチョコ耐久チャレンジ〜どのチロルが優勝か?
深見双葉
チロルチョコ耐久チャレンジ〜どのチロルが優勝か?
〜本記事に登場するチロルチョコについて〜
松尾製菓株式会社様
いつもお世話になっております。
チロルチョコは、この世を救う。そう信じております。
本記事は、チロルチョコへの深いリスペクトと共に執筆いたしました。
何卒、あたたかい目で見守っていただけますと幸いです。
【はじめに】
私は、本気モードのスイッチを、オンにした。
ふざけているわけじゃない。
全力で、本気になった。
「チロルチョコを、噛まずに、口の中でどれだけ耐久できるか」
そんな誰もやらない遊びに、
情熱とデータと哲学を注ぎ込もう。
そう、英断を下した。
アホだと笑われてもいい。
これは、私の、
孤独で、ちょっとおかしな戦いの記録だ。
きっかけは、投稿したエッセイ
『あくしゅ〜今、仕事へ行きたくないあなたへ』
その中に、私はこっそり仕掛けておいた。
「チロルチョコ耐久チャレンジ」
仕事中、こっそり口にチロルチョコを入れ、
噛まずに何分もたせられるか、ひとり遊びに興じる話。
きっとコメント欄はこうなると思っていた。
「わかる!」「やったことある!」
「仕事中にそんなことしてるんですか?笑」
……でも、みんな、ほとんど、触れてくれなかった。
私は、外した。
チロルチョコごと、無に帰した。
けれど、私は再び立ち上がった。
私は、私が、アホであることを
誇りに思っているのだ。
バカ真面目に、チロルチョコと向き合う。
そう、決めた。
【プロジェクト名】
チロルチョコ耐久チャレンジ
〜人類の歴史に、一粒の甘さを刻む〜
〈実験環境と装備〉
さすがに、これは職場ではできなかった。
始末書どころか、私のデスクが抹消される。
だから、自宅で。万全の体制で、私は挑んだ。
〈準備したアイテム〉
① チロルチョコ5種
スタンダード・ミルク・ストロベリーゼリー・クッキー・アーモンド。
誰もが一度は口にしたことのある、王道の味ばかり。
今度こそ「共感」されたい。その一心で、厳選セレクトした。
さらに、本実験では「公平性」を重視した。
一粒売りの大きなチロル(10g前後)ではなく、
すべて、バラエティパック(7g)で統一。
チロル界のオリンピック、ここに開催。
② 記録用カメラ(iPhone)
チロルの繊細な姿を、記録に残すために。
顕微鏡があれば理想的だったが、ここはスティーブ・ジョブズに任せた。
iPhoneで、ガチ撮影。
③ 計測器たち
Amazonで本格スイーツ用温度計を探すも、
「30円のチロルに2000円の温度計は高い」
という社会常識が、私の指を止めた。
結果、100均でスケールと温度計を調達。
チロルチョコに温度計を突き刺すという、
世界で3人目くらいの暴挙をやってのけた。
100均の温度計だって、真剣な顔をしていた。
だが、刺すのは、チロルチョコだった。
④ ルール(重要)
「噛まない」こと。
いかに長く、チロルと共に、口の中で過ごせるか。
それが、すべてであり、唯一のルール。
甘さと、時間と、忍耐の、静かな闘いである。
〈実験当日〉
2026年1月7日 天気:快晴(少し雲あり)
外気温:マイナス5℃ 室温:23℃ 湿度:54%
チロルチョコ内部温度:23℃
体調:まあまあ
覚悟:完璧
〈結果発表&レビュー〉
① スタンダード(コーヒーヌガー)
耐久時間:7分12秒
これは、もはやチョコではなかった。
最初のひと舐めは、ごく普通のミルクチョコ。
けれど、すぐにキャラメル的な粘着層が顔を出す。
口の中でハイチュウのように粘りながら、
じわじわと存在感を強めていく。
コーヒー感がようやく顔を出すのは、2分半を過ぎてから。
ここからが真骨頂だった。
甘さはねばりへ。
ねばりは余韻へ。
ひと粒のチョコが、三段階の変化を遂げていく。
4分過ぎには米粒サイズにまで縮むが、まだ終わらない。
最後に残ったそれは、ただの甘味ではなかった。
小さな祈り。
労働者の午後を支える、小宇宙のようなひと粒。
堂々の王者。初代チャンピオン。
② ミルク
耐久時間:1分53秒(後味20分持続)
口に入れた瞬間、ふわっと広がるミルク感。
いや、これはもう、ほぼ練乳。
スタンダードのようなねばりは一切なく、
ただ、やさしく、すーっと溶けていく。
短命でありながら、香りだけが長く残った。
喉の奥に、舌の裏に、
名残惜しさのような余韻をまとって。
体育会系のスタンダードに対して、文学部のミルク。
静かに手を振るように、去っていく。
やさしい別れを知っている子だった。
※この辺りで、コーヒーが飲みたくなるが、
口腔内温度を一定に保つために、水で口を整えた。
③ ストロベリーゼリー
耐久時間:10分42秒
予想外の伏兵だった。
最初は、ふんわりやさしい苺チョコ。
だが、ぷるんとゼリーが出現した瞬間、すべてが変わる。
明らかに、こいつは長丁場になる。
6分経ってもゼリーは健在。
8分を過ぎて、ようやく縮み始める。
10分を超えて、ついに昇天。
途中、一度だけ、
私はゼリーを口から取り出してみた。
そこにいたのは、薄いピンク色の、
ぷるぷるした、美しいさしみこんにゃく。
これは、お菓子ではない。
そう呼ぶには、私の人生経験が圧倒的に足りていなかった。
溶けない可愛さと、諦めの悪さの融合。
それが、ストロベリーゼリーだった。
④ クッキー&クリーム
耐久時間:2分52秒
最初は、甘めのミルクチョコレート。
だが次第に、チョコが姿を消していく。
残されたのは、味のないクッキー。
まるで「さっきまでの甘さは、夢でした」とでも言いたげに。
口の中に、静かな虚無が広がっていった。
ところが、2分半を過ぎたあたりで、
ほんの一瞬だけ、チョコの記憶が戻ってきた。
懐かしい人の声のように。
そして、ふたたび静かに消えていった。
感情を抑えた短編映画のような味。
印象は薄いのに、どこか忘れられない。
そんなチロルだった。
⑤ アーモンド
耐久時間:測定不能(チョコ層は1分半で消滅)
最初は、甘くやさしいチョコ。
けれど、それはあまりにも早く儚く溶けて、
中から現れたのは、
無味・無臭・溶けない、
完全体アーモンド(2cm×8mm)。
どうする?
私は悩んだ。
口から出して、見つめてみた。
それは、もはや楕円形の岩石だった。
唾液ではびくともしない。
飲み込んだら死ぬ。
噛んだらルール違反。
私は決めた。
このアーモンドを口に入れたまま、
この記事を、書き上げよう。
それが、私にできる、せめてものリスペクトだ。
こうしている今も、
私の口の中には、
アーモンドが、鎮座している。
【まとめ 〜甘い世界の片隅から〜】
チロルチョコには、
世界を、ほんのすこし甘くする力がある。
たった30円で手に入る、やさしさと遊び心。
疲れた日に、そっと口に入れるだけで、
ほんのすこし、「生きてみようかな」と思える。
ただし。
もし、あなたが「耐久チャレンジ」に挑むなら、
体調万全で。
そして最後には、歯磨きという名の、冷静なフィニッシュを忘れずに。
今、私の口の中には、
アーモンドが、いる。
まだいる。
……噛めない。飲めない。
でも、なぜか、少し安心する。
きっと、これは友情だ。
チロルチョコと共に、これからも、
私は書き続ける。
なぜなら、
アーモンドが、まだ溶けていないから。
私の物語は、まだ、カリッともしない。
チョコが消えても、芯が残る。
そう、人生も、たぶん、そんなものだ。
以上。
お付き合い、ありがとうございました。
(次回:「酢だこさん太郎 VS スルメジャーキー耐久チャレンジ」嘘です)
チロルチョコ耐久チャレンジ〜どのチロルが優勝か? 深見双葉 @nemucocogomen
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