青キ少年ハ眼ヲ閉ジル 二
「はいはーい。入学おめでとー新入生の皆々様~」
どうやら入学式が始まったらしい。が、こんな軽くて良いものなのか。スピーカーからは、誰かの生徒らしき声が聞こえるが、姿が見えず周りの生徒はずっと困惑している。
ずっとスピーカーから「おい、全然駄目じゃないか」とか、「台座持ってきてくれー!」とか、「そうじゃないだろう!」とかゴタゴタが聞こえてくる──絶対聞いたら駄目なやつだ、これ。楓さんも目を丸くしている。
ステージの袖から青いバンドを着けた生徒が大きめの台を持ってきて、声の正体がいるであろう場所に置くとやっと姿が見えた。
「やっと皆に我のご尊顔を拝ませることができて嬉しく思うぞ!こんな時に我の身長の低さを憎むが……まぁ良しとしてくれ。」
姿が見えたと云ってもほぼ顔しか見えない。小学生と見違える容貌(一瞬本当に小学生だと思った俺を許してくれ)だ。口調とまるであってない可愛らしい声で、白衣を着ている。
「我はこの学校の生徒会長の
そう云うと横に二人の生徒がでてくる。一人は女性で赤のチョーカーをしていて、もう一人は男性で長い髪を青のリボンで髪を括っている。二人ともリーダーの風格を感じさせ、隊長であることを納得させるような、そんな立ち振舞いだ。
「さて、この学校に入学式なんて堅い行事は要らない。何故なら我らは戦わなくてはならないからな。」
先程までの緩い雰囲気が一気に引き締まる。俺も思わず姿勢を正してしまった。
そんな生徒達の様子を見て頷くと、体育館前方の二つの扉が同時に開いた。
「早いかもしれんが決断の時だ。一つ云っておこう。この学校の校訓は【正義】だ。自分の正義に従った決断をしろよ。」
再び生徒を見渡す会長。隊長に合図をすると、各々立ち位置と逆の方の扉の近くへ向かい、姿勢を正し立った。
「皆から見て右手がBLUE、仲間第一の部隊。そして左手がRED、実力主義の部隊。好きなの扉へ向かえ。それ以外の道選ぶなら座ったままで構わんぞ。さぁ立て、決断しろ。己が【正義】に従え。」
会長の手を叩く音が体育館中に響き渡る。その音を聞いて、沢山の生徒が立ち、右や左へ歩きだした。
それを見て俺は焦っていた。先へ進める自信が無かった。俺はどの道を進めば良い?そんなことを悶々と考えていたら隣の楓さんが席を立った。
「飛鳥くんは行かないの?」
純粋な疑問が俺を刺す。入学式が始まるまであんなに笑っていたというのに今は何だ。覚悟を決めた鋭い目で俺を見てくる。更に思考がごたつく。
「楓さんは、決めてたのか?」
焦ってそんな言葉しか出なかった。多分同類を探していた。俺に答えを与えて欲しかった。
そんな願いを叩き落とすように楓さんは云った。
「うん。私はREDに行く。」
飛鳥くんは?と云っているような目で俺を見てくる。声はさっきよりも硬かった。周りで目的に向かう生徒がゆっくり歩いている様に感じる。
俺は、俺は。
「これが私の【正義】だから。」
その一言で俺の心の中の何かが動いた。
と、同時に俺は席から立ち上がった。
「分かった。俺も、行くよ。」
そう云うと楓さんは再び微笑んだ。
そうして俺らは隊長達が交差した様にすれ違い、前を向いて歩いていった。後ろは向かなかった。俺はBLUEの扉へ向かった。
正直戦うとか考えられない。だけど、誰かと戦うなら、俺だって何かできるかもしれない。
選択への後悔とかこれからの不安とか全部が頭の中でごちゃついた。そうして俺は、目を閉じた。
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