第12話 希望の光

ケイシとリーシの死から三年の月日が流れた。

ケイシ城は今や、悲しみを纏った静寂の城となっていた。

かつての輝かしい片鱗は微塵もなく、ただ時間だけが淡々と過ぎていく。

だが、そんな静寂の中に、唯一希望の光が差し込む瞬間があった。

それは、8歳になった長男セイカと、3歳になった次男ユイの、子供らしい無邪気な声だった。


セイカは友達と駆けっこをして遊ぶ。

その後を、まだ赤子っぽさの残るユイが必死で追いかける。


「兄ちゃま、兄ちゃま、まってー、まってー」


セイカは夢中で駆け回るが、ユイが転んで泣くと、駆け足を止め、弟の元へ駆け寄る。


「怪我したのか?どれ、このくらい大丈夫だ。ほら、兄様がおんぶしてやる」


ユイは父や母の顔を覚えていない。

何一つ記憶にない赤子だったから、優しい兄セイカが全てであった。

そしてセイカもまた、本当に優しく、弟を大切にする兄となっていた。


寝るときは一つの布団で眠り、ユイが怖がらぬよう寄り添う。

ユイはよくオネショをして泣くが、セイカは優しく言った。


「兄様もお前の歳の頃は毎晩したさ。なにも恥ずかしいことじゃない。ほら、気持ち悪いだろ、着物と布団を替えるぞ」


どんな時も、ユイはセイカの後を追い、セイカも友達と遊びたくても弟をおんぶしながら遊ぶ。

本当に仲の良い兄弟だった。


側近たちの間で胸を熱くさせたのは、セイカがケイシに生き写しの顔立ちに成長したこと。

そして、ユイの顔は母リーシにそっくりで、3歳にして美貌を宿していたため、側近たちはよからぬ男が近づかぬよう、常に目を光らせていた。


セイカの指導係にはソービ、ユイにはユーラがついた。

学問、剣術、戦術。セイカは毎日厳しく学び、3歳のユイも真似事ながら同じ道を歩み始めた。


城内は悲しみに沈み、かつての輝きはないが、子供たちの声だけは唯一、希望の灯のように城を照らしていた。

子供たちの笑顔や、互いを思いやる仕草を目にする度、側近たちは目頭を熱くし、深く心を打たれていた。


「今に、今にセイカ様の時代がくる‥」


この言葉を合言葉に、ケイシの側近たちは辛い日々を耐え忍んだ。

セイカが12歳になれば、正式に城主となる。

そして、今度はセイカ城、セイカ軍として、再び栄光の日々を取り戻すのだ。


城の石壁には静かな哀愁が漂う。

しかし、子供たちの無邪気な笑い声は、未来への希望を示すように城内に響き渡る。

失われたものは多いが、守るべき命と、次代へ繋ぐ意志は、確かにこの城に残っている-----。

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