第10話 愛する妻よ‥今

リーシの亡き骸を、広間に置いたままどれほど経っただろうか。

ケイシは一瞬も眠らず、ただ嗚咽をあげ続けていた。


「リーシ、リーシ……」


何度も、何度も名前を呼ぶ声が、広間にこだました。

セイカとユイはこの広間に通してもらえなかったが、セイカは肌で母の死を感じ取っていた。

「母様は、もう……」

殺されたことを、すべてを悟っていた。


「殿!しっかりなさいませ!リーシ様をご覧ください!どんどん腐り始めております、殿!あの美しいお顔をそんなふうにしてもよいのですか!」


側近の声は強く、荒々しく響いた。

ケイシは、ただ小さく頷くだけで答える。


「では、リーシ様を埋葬いたします‥」


埋葬は、城内の奥にあるケイシとリーシの部屋の庭に行われた。

側近たちは、ケイシがどれほど狂わんばかりにリーシを愛していたか、誰よりも理解していた。

少しでもリーシを傍に感じられるようにと、精一杯の配慮だった。


しかし、ケイシにとってそんなことはどうでもよかった。

心に決めていた。リーシの死を、絶対に受け入れることはできない。


夜が深くなり、城内は静寂に包まれる。

ケイシは庭に佇むリーシの眠る場所を見つめ、幻影のリーシを抱きしめ手を離さなかった。

冷たくなった頬も、静かに閉じられた目も、すべて愛おしかった。

この胸の痛みが、愛の深さを物語っていた。


「リーシ……俺は、絶対にお前がいなければ……」


涙と嗚咽は止まらない。

しかしその痛みの中で、ケイシの心は一つの決意で満たされていた。


その夜、ケイシは初めて、少しだけ冷静さを取り戻した。

愛する者を失った悲しみの底で、今自分が呼吸をしている理由を見出したのだった-----。

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