遊び納めはクマさんと
ちあきっこ
1話完結
(2015/12/30現在)
休みの日でも、できるだけ朝五時に起きる。
習慣を変えたくないからだ。起きて、十六穀米と納豆と味噌汁を食べる。眠ければ二度寝、起きていられそうならそのまま一日を始める。昼夜逆転だけはしないよう、ひそかに気をつけている。
――とはいえ、この日はスマホのスヌーズと戦い、気づけば十時近くまで眠っていた。
そこへ届いた、控えめな一通。
「今日、お昼お暇?」
クマさんからだった。
世間的には恋人と呼ばれる関係なのだと思う。でも、そう言ってしまうと何かが削がれてしまう気がして、わたしたちは「互いに互いを必要とする関係」というところに落ち着いている。
掃除は前日までにだいたい終わっている。用事があるなら仕方ないが、掃除は気合いでどうにかなるし、時間もいくらでも伸ばせる。断る理由はなかった。
一応、家族に確認をして(実際は必要ないのだけれど)、出かけることにした。
この前の「おもてなし」とは正反対で、今日は完全にノープランだ。
「三ノ宮に行けば、たぶん何かあるでしょう」
そんな調子で話がまとまり、以前わたしが「KFCに行きたい」と言ったことを覚えてくれていた彼の一言で、行き先は神戸に決まった。
特別な目的はない。
雑貨屋をのぞき、ソフマップでマウスを選んでもらい、百円ショップでストップウォッチとキッチンタイマーを探す。カルディでコーヒーを飲みながら、来年の年始に職場へ持っていくお菓子を選ぶ。
時間は、ゆっくりと流れていた。
こういう一日も、いい。
最後に立ち寄ったのは、長年気になっていたKFCだった。
「母があまり好きじゃないから」という、今思えばどうでもいい理由で、行きそびれてきた場所だ。
「バーガーに逃げちゃだめだよ。骨のあるチキンを食べてから評価しよう」
そう約束して、チキン二個セットを頼んだ。
結果は、「嫌いじゃないけど、特別好きでもない」。
クリスマスの行列に並ぶほどではないかな、というのが正直な感想だった。もしかしたら、あれは雰囲気が作る魔法なのかもしれない。満面の笑みのカーネル・サンダースを見て、少しだけ大人の余裕を感じた。
梅田や新大阪まで出て、りくろーおじさんのチーズケーキを買う案も出たが、長蛇の列を想像して断念した。
結局、鈍行電車で、ゆっくり帰ることにする。
クマさんといると、電車を待つだけの無機質な時間も楽しい。彼の「もくもくケムケムタイム」を待つ時間さえ、退屈ではない。不思議と、前向きな気持ちになる。
美やおしゃれへの向上心が芽生え、なにより、安心できる。クマというより、時々ベイマックスに見えることすらある。
今年最後に、こんなふうに遊べてよかった。
年の終わりに、ノープランな一日を書き留められてよかった。
ノープランで出かけられる関係は、きっと、とても贅沢だ。
遊び納めはクマさんと ちあきっこ @Chiakikko
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