【放送事故】露出耐性S(全裸)の俺、清楚美少女のダンジョン配信に映り込む→検閲AI(セーフティちゃん)が過労で伝説へ(なお局部は謎の光が死守)

他力本願寺

第1話『【放送事故】危険判定:サキュバスと全裸肉弾戦(配信に映った)』

 ――ガンッ!


「――ッ、このっ、離れろ!」

「やだ! もっとちょうだい!」


 ぶつかった衝撃で肺の空気が抜けた。次の瞬間、熱が覆いかぶさる。

 布一枚ないぶん、接触の情報がダイレクトに来る。逃げ道がない。

 柔らかい肉の圧力が逆に恐ろしい。


 甘い吐息が、耳のすぐそばで弾けた。


「ねえ、いいでしょ? もっと、ちゃんと――」

「よくない。……距離を取れ」


 首に回った腕が締まる。胸郭が押され、呼吸が浅くなる。

 ――これは色気じゃない。拘束だ。呼吸を奪うタイプの状態異常だ。


 密着。拘束。そして――危険判定。


【SAFETY-CHAN LOG】

〔検出:過度な密着/危険アングル予測〕→〔処理:全面遮蔽バリア展開/遅延バッファ作動〕

〔密着継続:8.6秒〕

〔危険判定:RED〕〔危険判定残機:2/3〕

〔稼働率:92%(WARNING)〕

〔備考:配信安全性を優先します。距離を確保してください〕


 視界の端で、検閲AI「セーフティちゃん」のログが猛烈な勢いで流れた。

 同時に、俺たちの姿はまばゆい光と大量の「安全スタンプ(猫、野菜、規制マーク)」で塗りつぶされる。

 ――映像としては安全なはずだ。


 なのに、余計に危なく見えるのは、たぶん俺の気のせいじゃない。


 だが俺が気にしているのは羞恥心じゃない。


 重心だ。


(腕の固定。首の角度。体重の乗せ方……こいつ、分かってやってる)


「……くっ、関節を極めに来てるのか!?」

「えへへ。硬いねぇ。もっと、溶かしてあげる♡」


 サキュバスの攻撃手段は「誘惑」と「密着による精気吸収(状態異常)」。

 まともに食らえば、一瞬で意識を持っていかれる。


 だが俺は、冷静に彼女の手首を掴み、腰をひねって重心をずらした。

 柔道の袈裟固めを解く手順。サキュバスの豊満な双丘が露わになるが、今はただ邪魔なだけだ。

 色気もへったくれもない、純粋なグラップリング(組み技)の攻防だ。


 ――問題は、ここが俺のソロ配信じゃないこと。


 すぐそばで浮いているドローンカメラ。

 そこには「Akari Ch.」のロゴ。


 そして、その向こうのコメント欄は阿鼻叫喚の地獄と化していた。


【コメント】

:うわあああ!? なんか映った!

:誰だ今の“全裸”!?

:通報した(反射)

:待って待って体勢がアウト寄りだろ

:セーフティちゃん仕事しろ!間に合ってない!

:いや動きがガチすぎて草 格闘経験者だろ

:これ放送事故www

:ヘッドホン勢、今の音やばくない?

:光で隠れてるのに想像が勝つんだが??


【LIVE】同接:721,084人

【SAFETY-CHAN 稼働率】:94%(上昇中)


「……まずい」


 俺はサキュバスの腕をねじ上げながら、額に脂汗をかいた。

 これ、絶対燃える。いや、燃え“かけてる”。


 ◇


 ――数時間前。


「……よし。装備重量ゼロ、確認」


 俺、久我迅(くが・じん)は、ダンジョンの更衣室で最後の確認をしていた。

 鏡に映るのは、一糸まとわぬ自分の姿。いわゆる全裸だ。


 だが、変態ではない。

 これは「最適解」だ。


【スキル:露出耐性S(アダマンタイト・ネイキッド)】

・装備重量が0に近いほど、防御・回避・回復力が指数関数的に上昇する

・完全無装備ボーナス:物理ダメージ90%カット/状態異常無効/HP毎秒3%回復


 このふざけた、しかし最強のスキルのせいで、俺は服を着ることができない。

 服を着ればただの一般人。脱げば要塞。

 なら、脱ぐしかない。


「局部遮蔽、よし」


 俺が視線を落とすと、そこには神々しいほどの【謎の光】が輝いている。

 これも俺のスキル【謎の光(ミステリーベール)】の効果だ。

 外部視点――人の目やカメラから、社会的に危険な領域を自動で遮蔽する。


 これがあるからこそ、俺はかろうじて「攻略者」として成立している。


 今日の目的地は第15層「イベントフロア」。

 期間限定のレアボスが出現するエリアだ。稼ぎ時。


 俺はタオル一枚を腰に巻き(ダンジョンに入る瞬間まではマナーだ)、ゲートをくぐった。


 ◇


 第15層は桜並木のような美しいフィールドだった。

 だが、そこはすでに人だかりができている。


「あ、天宮あかりだ!」

「マジか、トップ配信者じゃん」

「撮影中かな? 邪魔しないようにしよ」


 遠くに見えるのは、清楚な白衣風の装備に身を包んだ少女。

 天宮あかり。

 DungeonTubeの登録者数100万人超え、清楚系トップ配信者だ。


 彼女の周りには数機のドローンが飛び、取り巻きのサポーターたちが周囲を警戒している。


(……有名人は大変だな)


 俺は他人事のように思いながら、彼女たちとは別のルートを選んだ。

 俺の目的は配信じゃない。素材集めだ。


 タオルをインベントリにしまい、完全な「戦闘態勢(無装備)」になる。


 その時だった。


「キシャァァァァッ!!」


 上空から、ピンク色の影が降ってきた。

 イベントボスの取り巻き、サキュバス。


 しかも、よりによって俺と――あかりの撮影隊の間に落ちてきた。


「――ッ!」


 俺は反射的に迎撃した。

 飛びかかってくるサキュバスを正面から受け止める。


 衝撃。


 無装備ゆえの【露出耐性S】が発動し、ダメージはゼロ。

 だが、運動エネルギーまでは消せない。俺たちはもつれ合い、地面を転がった。


 転がった先は――あかりの配信カメラの、ど真ん中。


 ◇


 そして、現在に戻る。


「は、離れて! きゃあああっ!?」


 すぐそばで、あかりの悲鳴が聞こえた。

 俺はサキュバスを締め上げながら、必死に顔を上げる。


「すまん! すぐにどかす!」


 叫んだが、遅かった。

 あかりのドローンカメラが、バッチリと俺たちを捉えている。


 無装備の男(映像としては光とスタンプで安全処理されている)と、

 露出度の高い装束のサキュバスが、

 至近距離で荒い息をしながら組み合っている――ように見える映像。


 規約的に、危ない。


【SAFETY-CHAN LOG】

〔検出:配信安全性の低下/危険判定累積〕→〔処理:画面全体ホワイトアウト/音声ログ維持〕

〔危険判定:RED〕〔危険判定残機:1/3〕

〔稼働率:99%(LIMIT)〕

〔備考:安全処理を優先します。落ち着いてください〕


 配信画面が真っ白に染まる。

 だが、音声とログは生きている。


【コメント】

:なんかすごい声聞こえるんだけど!?

:BANだろこれwww

:あかりちゃん逃げて!

:いや、あの男の関節技、完璧に入ってね?

:そういう問題じゃねえよ!

:止めろ!止めろ!でも見たい!(最低)


「……止めます! 配信止めます!」


 あかりが慌ててコンソールを操作する音がした。

 プツン、と中継が途切れる気配。


 だが、俺は知っている。

 現代のネット社会において、「止めた」瞬間こそが一番拡散するタイミングだということを。


 俺の網膜に、DungeonTubeからの通知が無慈悲に表示された。


【通知:あなたの映像が含まれるクリップが生成されました】

【拡散速度:計測不能(Viral)】


「……終わった」


 俺はサキュバスの関節を極めたまま、天を仰いだ。

 俺の平穏な攻略生活は、この瞬間、完全に崩壊した。


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(作者あとがき)

第1話を読んでいただきありがとうございます!

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次回、止めても止まらない“拡散”が始まります。

本日第3話まで公開。

その後毎日更新予定。

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