第14話-2 るびぃも俺も経験済み
――コンコンっ。
「おおっ!? あ、ノックか……」
「あたしもびっくりした、急な大声やめてよ……」
二人仲良く驚いていたようだ。きゅぴは俺の声かも知れないけど。
「わ、悪い……」
きゅぴの部屋の扉が開かれると、るびぃがひょこっと部屋に入ってきた。
「そろそろ話しも済んだかと思ったのですが……」
るびぃは俺ときゅぴの交互を見て、ピタッと足を止めた。俺たちの雰囲気からまだ話したりない空気でも感じたのかもしれない。
「……まだ、お話し中でしたか?」
「いや、きゅぴの生気吸収を協力することは言ったし終わったかな……」
きゅぴの生気を吸収出来るように協力すると言った。今のところ、きゅぴが××出来るようになったら、俺と××するっていう……ほんとにそれでいいんだろうか?
「どうされました、にーさん?」
「なんでもない、なんでもない……」
……と、ともかくまずはきゅぴがえっちなことに対して失神しないように、耐性を作らないとな、相手をするしないの話しはそれからだ、うん、それからだ。
「あたしからも個人的なお願いがあったんだけど、蒼が協力してくれるって言ってくれたからもういいかな……ねっ、蒼?」
「あ、ああ……」
きゅぴのお願いは、経験がないのがバレないようにして欲しいだったか? たぶんいい感じに話しとかあわせてあげればそれでいいだろ、簡単なことだ。
「個人的なお願い?」
お兄ちゃんをそんなやましさを感じる細く冷たい目で見ないでおくれ。
「そ、それよりどうしたんだ、るびぃ? 何か用事か?」
「えっと……きゅぴさんがにーさんと話す前にお願いされていたんですが、話しが終わったらお風呂に入りたいとお願いされていたので、準備が出来たことを言いに来ました」
「えっ!? お風呂入れるの!? やったやった!」
きゅぴはよっぽど嬉しいようで、布団をバサッとどけてベッドから飛び出した。するときゅぴのウサギパジャマのだぼだぼ姿の全身が露わになった。
「……きゅぴさん、そのパジャマ着たんですか?」
ピンクのウサギパジャマを着ているきゅぴの全身を上から下まで見て、何故か信じられないものでも見たかのように、るびぃは驚いている。
「うん、可愛いでしょ?」
きゅぴはクルッと一回転、さらに逆回りでも一回転してみせた。
たなびくウサ耳が可愛い、ああ可愛い。
「そうですね、女児っぽいのでどうかと思ったのですが……」
「……女児? あ、子供っぽいっていうこと? それが可愛くていいんじゃん! ねぇ蒼も可愛いと思うよね? ほらほら、きゅぴはウサギだよ? ピョンピョン!」
フードをまた被ったきゅぴが、ウサ耳をピョンピョンさせている。
「くっ、可愛……」
きゅぴの可愛さに凝視できずにそらしてしまった。
「何ですか『くっかわ』って?」
「うるさいな、ちょっとは我慢した結果だ……」
可愛いと素直に言うと、妹に白い目で見られそうだから少し我慢した、それだけだ。
「ほら~、蒼もこうゆうの好きなんでしょ? でしょでしょ?」
急にギャルのテンションできゅぴは近づいてくると、色んなポーズを取って様々な角度から、ピンクウサギパジャマをヒラヒラとさせて見せつけてきた。
「まあ、好きかも……」
「へぇ、にーさんこうゆうのが好きなんですか、へぇ……」
思わずこぼれた心の本音を妹に拾われた。
やめて、白い目で見ないで、俺だからじゃなくてたぶん男全般だから。
「……はあ、きゅぴさん、見せつけるのは後ででも出来ますから、今はお風呂を用意しましたので下に降りて、あとはお母さんに聴いてください」
「りょ! それじゃあ蒼! るびぃちゃん! また後でね!」
きゅぴは敬礼をすると、いち早く部屋から出て行った。
……よっぽどお風呂に入りたかったのかもしれない。
「きゅぴさん、元気になってよかったです」
……今となっては明るくなったけど、そういえば最初は落ち込んでいたな。
「どうやったんですか?」
方法を聞かれても、これといってないのだが、しいていうなら、
「……ま、よりそった結果かな?」
俺のニオイというかフェロモンは、きゅぴを安心させるだろうがそれだけだ。俺が彼女の話しをちゃんと聴いてあげたことが一番だと、思いたい!
「何かムカつきますが、それでいいです……」
不満を口にするるびぃだが、とりあえず納得してくれた。
「ところで、きゅぴさんの生気吸収の協力に関しては、どうなりましたか?」
るびぃの目つきが変わった。たぶんこれが一番知りたかったんだろうと思う。
「あー、何て言うか、その……一応、きゅぴが失神しないようになったら、俺が……まあ相手をするってことになってるかな? あ、でもでも、まだきゅぴが具体的にどうすれば失神しないかはわからないから、これから考えていくんだぁ、ははは……」
妹に何言ってんだろうな俺。
「………………」
るびぃの目が冷たい。笑っているのは俺だけだった。
……でもるびぃのこの反応は当然だ。だって兄が女の子と××する約束しているのを聴かされたのだから、キモいと思われてもしょうがないと思う。
「お、怒ってる?」
本当は『キモくない?』と聴きたいが、るびぃに『キモい』と言われると、たぶん立ち直れないというか、死んでも言われたくないので言えなかった。
「怒ってはいませんよ」
だったらその不機嫌なオーラを消してくれないか妹よ。
「それに、きゅぴさんの事情は理解していますので、にーさんがきゅぴさんとそういう関係になることは覚悟していますので、一応……」
理解はしているけど納得はしていない。怒っているのが十二分に伝わった。
「それに別の方法で生気を吸収されるよりかは、まだマシ……だと思いますし」
そういえばるびぃも知っているんだったな、それじゃあ、
「言いませんよ私」
先手を打たれた。口にすることすら出来なかったとは……。
「それにきゅぴさんはすごく恥ずかしがっていたんじゃないですか?」
「あ、うん……」と、か細く返した。
「そんな相手に無理矢理しようなんて最低ですよ、サキュバスである彼女は普通はしないんですから、大人しくえっちなことで我慢してください」
俺がおかしいのかな……普通、えっちなことの方が最低な……いや、別の方法がわからないから何とも言えないけど、それでも、ちょっとぐらいは知りたい。
「……何ですか?」
生気を吸収する別の方法を、きゅぴは恥ずかしがっているけど、るびぃはどうなんだろうか? 恥ずかしがっていないように見えるけど、実際は……?
「るびぃにとって、別の方法って恥ずかしくはないのか?」
「………………」
るびぃは無言だった。
どうせ返ってこないと思っていたダメ元だ。だから別に……、
「本来なら私も恥ずかしかったでしょうが、私の場合はあまり恥ずかしくはありませんでした。独りよがりではありましたが、とても素敵な時間でしたよ……」
……………………。
「え?」
るびぃが何のことを言っているのか、理解するのが遅れてしまった。
「……ちょ、え?」
るびぃも恥ずかしいようだが、それよりも気になるのは、
「お前はそれをやったことがあるのか?」
具体的に何をしたかわからないが、るびぃは過去形で喋っている。つまり、サキュバスのきゅぴが言いたくないほど恥ずかしいことを、るびぃは経験済みということに、
「にーさんもですよ。わからないだけで、にーさんもしたことありますよ」
「え? 俺も?」
二人が恥ずかしがる行為に全く身に覚えがないが、つまりはその……。
――俺が今までの人生でしたあることが、生気を吸収する別の方法だってのか?!
「これが私の出せる最大のヒントです。私としては、この方法できゅぴさんに生気を吸収して欲しくないので、わからないでいてくれた方が助かります……」
それなのに教えてくれるとは、ウチの妹は最高に最高だな。
「ありがとうな、るびぃ……」
お礼を言うが、るびぃは照れているのかそっぽむいてしまった。
「それよりも、いつまでもここにいてはきゅぴさんに悪いです、それに彼女がお風呂から上がったら晩ご飯です。行きますよにーさん」
「そうだな……」
とりあえず今は、このことを忘れないでおこうと記憶したのだった。
――――――。
初めての家族以外との食事だったが、疲れているのかきゅぴはお風呂から上がると、
『ごめんなさい、ちょっともう眠いかも……』
そう言って、かーさんの肩を借りて二階に上がっていった。
『たぶん疲れていたんだろうな……』
今日夢魔界から人間界、さらには学校に通い出して、そこで見栄を張り出した。
……疲れる要因はいくらでもある。
『思っていたよりも、早いかも知れませんね……』
きゅぴはもっと夜更かしするタイプだと、るびぃは思っていたんだろうか?
るびぃの言っていることに違和感を覚えたが、すぐに気にならなくなり、こうして、俺の長い一日は終わりを告げたのだった――。
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