Realia~ゲーマーと食いしん坊のまったりVRライフ~
チャトラブ=キジトラスキー
第1話 Realia《レアリア》
私が目を開くと、そこにはまるでプロの写真家の作品みたいな景色が広がっていた。
「うわぁ~……」
と、感嘆の声をあげながら周りを見渡す。
私は今、一本の立派なビワの木が生えている草原に立っていた。
すこし離れたところには林があって、その木々の合間から
気持ちのいい朝日が差し込んできた。
不意にそよ風が吹き、花と草の香りを運んで来て、
私のセーラー服の襟をはためかせた。
「わぁ、ビワだ~!」
私はビワの木に駆け寄り、きれいなオレンジ色の実に手を伸ばす。
私は産毛の生えたビワの薄皮を手で剥くと、そのままかぶりついた。
「う~ん、みずみずしくておいしい!」
景色を眺めながらビワを頬張る。
草原では白い綿毛が、風に吹かれてころころと転がっている。
「最近のゲームってすごいんだなぁ」
そう、ここはゲームの世界――のはず。
しかし、現実と全く区別がつかなかった。
しゃがみこんで、足元に生えている草をじっくりと見てみると
草の葉脈まで作り込まれていた。
どこからか飛んで来たバッタが目の前の草の上に乗っかって私をじっと見る。
なんだか歓迎してくれている気がして、ちょっとうれしくなった私が
バッタに小さく手を振ると
バッタは再び草むらの中に消えていった。
今度は立ち上がって深呼吸する。
朝のちょっと湿った空気が、胸いっぱいに広がっておいしかった。
「これならほかの食べ物も期待できそう!」
これが、普段ゲームをしない私がこのゲームを始めた理由だ。
ゲームの中のものが本当に食べられる――
そう熱弁する幼馴染に、半強制的に誘われたんだ。
「早く
蓮というのは幼馴染の名前だ。
さっきのビワの実を蓮くんにも食べてみてほしい。きっとびっくりするはず。
ビワのことを考えているうちに、もう一個食べたくなってしまった。
取れそうなビワの実がないか、木のまわりをぐるぐる回って、
無理矢理手を伸ばしたりしてみる。
――届かない。
「早く蓮くん、くればいいのになぁ……できれば高身長で」
さっきと違う意味を込めて、同じセリフを呟いた。
「どこ行っちゃったんだろ。キャラクターメイキングに時間かけてるのかなぁ」
レンくんはゲームが大好きなやつだ。
特にバトルものは、ものっすごく強いらしい。
きっとキャラにも、すごくこだわってるんだろうなぁ……
私は元の蓮くんの顔で、12頭身くらいあるムキムキマッチョの姿を想像した。
私はキャラクターに特にこだわりがなかったので、サポートAIを名乗る人に
「今の私とおんなじでいいよ」とお願いしたら
本当にそっくりにキャラクターを作ってくれた。言ってみるもんだね。
蓮が私の姿を見たら絶対「もっとこだわれー!」って駄目出しされるだろうなぁ……
しかしどうしたものかなぁ、ただ待ってるのもヒマだし、普段ゲームとか全然しないから何したらいいかよくわかんないんだけど。
怖い敵とか出てきたらどうしよう……
でっかい蜘蛛とかいきなり出てきたら、ひっくり返る自身がある。
なんてことを考えていると、目の前にスーっと光の球が現れた。
「ふんぎゃぁぁ!出たあぁぁ!!……ってあれ?」
とっさにビワの木の後ろに隠れて覗くと、なんだか見覚えがある。
『驚かせて申し訳ありません。私はヒナさんのパーソナルサポートAIです』
そうだ。よく見たら私のゲームキャラクターを作るときに出てきた
「パーソナルサポートAI」さんだ。
『プレイヤー【ヒナ】の日本フィールドへの転送を確認しました。
これよりサポートを再開します。なんなりと申しつけください』
「あ~ちょうどよかった!色々聞きたかったんだ!……おっと、その前に
遅くなったけど自己紹介するね。
私は
かわいいものと食べることが大好きな、中学二年生の女の子です!」
『……承りました。しかし個人情報の開示には細心の注意を払ってください』
……いきなり注意されちゃったよ。
「ところで、これから何をしたらいいか教えて?人を待ってるから、
あんまりここから動くわけにもいかなくて困ってたんだよ~」
『承知しました。でもまずは―――』
AIさんが私のまわりをゆっくりとまわって、視線を誘導するように動く。
その時はじめて、私が今いる場所が小高い丘である事に気付いた。
周りが見渡せるところまで前に出てみる。
そして―――眼下に広がる景色に、私は思わず息を飲んだ。
朝の日差しを浴びてキラキラと水面が輝く大きな湖と、
そのほとりにある箱庭のような小さな街
そして湖の向こうには雄大な山々が聳えていた。
『【
私はレアリアの自然を眺めながらAIさんの宣言を聞いて、
まるで映画の始まりのような胸の高鳴りを覚えた。
よし、次はあの林に行ってみようかな!
林の近くには、草原のあちこちで見かける綿毛たちが集まって、
綺麗に並んでぽんぽんと飛び跳ねていた。
へえ、あれって動物だったんだ。見に行こうっと。
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