第1話 異界の扉
午後のキャンパスは、柔らかな秋の日差しに包まれていた。
大学の構内を歩く学生たちの笑い声が風に乗り、どこか穏やかな日常の香りを漂わせる。
その中に、四人の大学生がいた。
悠斗、真琴、慎一、翔太。
彼らはゼミの仲間で、課題のために集まっていた。
「そろそろ準備しようか」
悠斗が鞄からノートパソコンを取り出しながら言う。
「この前の資料、結構難しくてさ……」
真琴は眉をひそめ、メモ帳にペンを走らせている。
慎一はスマートフォンでデータを確認しつつ、
「データが古い気がする。もう一度ネットで調べ直そう」
翔太はそんな真面目な空気に少し退屈そうに笑いながら、
「たまには息抜きもしないと、頭パンクするぜ!」
それぞれの個性がにじむ和やかな時間だった。
その時、悠斗のスマホが突然震えた。
通知を見て顔色が変わる。
「……何これ?」
四人は画面を覗き込んだ。
そこには、謎のアプリのアイコンが現れていた。
アプリ名は『深淵の扉』。
誰もそんなアプリをインストールした覚えはなかった。
「これ、誰かのいたずらじゃないか?」
翔太が半笑いで言う。
しかし、悠斗が勇気を出してタップすると、画面が真っ暗になり、次の瞬間、目の前の世界が歪み始めた。
気がつくと、四人は見知らぬ場所に立っていた。
そこは、先ほどまでの陽光とは正反対の、重苦しい霧が立ち込める森だった。
空は鉛色に覆われ、木々は異様にねじれている。
「うそだろ……ここ、どこだ?」
悠斗は周囲を見渡しながら、声を震わせた。
真琴も震える声で答える。
「こんな場所、見たことない……」
スマホはどれも圏外。慎一が試みた通信は一切通じなかった。
「……完全に異世界に来たってことか?」
慎一が冷静に推測する。
翔太は不安を隠せずに言った。
「マジでヤバい。これ、ゲームとかじゃなくて現実だよな?」
周囲の霧が深くなる。
遠くで、何か不気味な囁き声が聞こえる。
それは言葉にならない低い音で、耳を刺すようだった。
四人は互いに距離を詰め、恐怖を共有しながらも、前に進むことを決めた。
ふと足元に目をやると、古びた書物が落ちている。
ページはボロボロで、文字はほとんど読めなかったが、どこか重要な意味を持っているように思えた。
真琴が恐る恐る手を伸ばす。
「これ……何かの手がかりかもしれない」
書物を拾った瞬間、森の空気が一層重くなり、四人の体温が急に冷たく感じられた。
その背後から、不意に冷たい風が吹き抜けた。
突然、森の奥から低いうなり声が響いた。
「まずい……何かが近づいている」
悠斗が叫ぶ。
彼らは慌てて走り出すが、霧は濃く、足元も見えにくい。
慎一が足を取られて転びかけ、翔太が助け起こす。
「気をつけろ!何が潜んでいるかわからない」
しかし、逃げても逃げても、得体の知れない影が追ってくるようだった。
森の中で、彼らは次第に精神的にも追い詰められていった。
不可解な現象や幻覚のような視覚の揺らぎ。
真琴は涙をこらえながらも必死に声を上げる。
「諦めちゃだめ……一緒にいれば、きっと……」
だが、その言葉に翔太は小さく頷くだけで、表情は暗く曇っていた。
やがて、奇妙な石の塚と古代の遺物が姿を現した。
「これは……何かの祭壇か?」
慎一が観察する。
それは見覚えのない象形文字や紋様で覆われていた。
「これが、この世界の秘密につながっているのかもしれない」
四人は息を整えながらも、未知の世界の謎を解く覚悟を決めた。
しかし、その先に待ち受けるのは狂気と絶望、そして死の影だった。
遠くから響く冷たい声。
見えざる存在が、彼らの試練の始まりを告げていた。
「これが、君たちの物語の幕開けだ」
声は虚空に響き渡り、四人の心に凍てつくような寒気を残した。
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