転生しなおしたところで、俺の勇者に対する復讐心は燃え尽きない。
狐囃もやし_こばやしもやし
第1話
「よお。俺、見た事あるよな?」
「ゆ、勇者様?」
辺境の地。この村に住んでいた俺は、村の入り口で勇者一行らしき人物を見かけた。
勇者一行は、長年の間帝国の民を苦しめていた、世界共通の敵である『魔王』を打倒するために編成された先鋭部隊である。
……なんてものは、前世で観たラノベのよくある設定。
何を隠そう、俺は転生者である。
前世、ただの高校生だったのに、友達の悪ふざけによって窓から転落。背中を強打して、命を落とした。
今世では、チートスキルも何もないから、辺境の農村で可愛い妻と余生を過ごすつもりだった。
「勇者御一行が、なぜこんなところに?」
「ああ……俺らぁ、ちょっと飯にありつけなくてな。だから、村の備蓄を分けて欲しいんだ」
この人は勇者、アンセス・ルーアイズ。
最も国民から支持を受けている人である。魔法の腕も剣の腕も一級品。
だからこそ、勇者として抜擢された。
そんな勇者が飯にありつけていない。ならば、国民として最大の支援をしたいところだが……。
「すみませんが、備蓄が残ってなくて……」
「ええ?まじか。じゃあさ……」
勇者が次に取った行動は、衝撃的だった。
……なんと腰の剣に手をかけたのである。
そして次の刹那、後ろで待機していた大賢者が杖の先に魔力を込め始める。
その魔力が放出された瞬間、俺の意識は白い閃光の中に消えた。
次に目を覚ましたのは、焦土と化した村の大地だった。
何が起きたのか分からなかった。
確か勇者一行が俺の村に……。
「あれ?まだ生きてたんだ」
「……ぇ?」
「無いんだったら、奪うしか無いよね」
俺の頭の上に、勇者の足が乗る。
……あの子は?
「ほら、お前の嫁だ」
「……ルイス?」
「……ファ──」
俺は、妻の名を呼んだ。
妻は、腕に深刻な火傷を負っていた。
そして次の瞬間。
彼女の首が飛んだ。
血飛沫が俺の顔にかかる。生ぬるくて、鉄臭かった。
「……ゆ、勇者さまッ──」
「次は君の番。早く妻の元に行けばいいさ」
勇者は気持ち悪くて、意地の悪い悪趣味な笑顔を浮かべながら、俺に一閃と剣を振り下ろした。
──のちの歴史書によれば、ここは魔物の襲撃によって消えた村とされているそうだ。
転生しなおしたところで、俺の勇者に対する復讐心は燃え尽きない。 狐囃もやし_こばやしもやし @cornkon-moyashi
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