階段の女
久米橋花純@旧れんげ
第1話
ある地方の大学に通う学生・圭介は、
毎日使うキャンパスの裏手の階段がどうも気になっていた。
古くて、薄暗くて、人通りが少ない。
ただそれだけならよくあることだが、
なぜかいつも “誰かに見られている” ような気がする。
でも、振り返っても誰もいない。
そんな日が続いた。
ある日、友達にその話をすると、
「その階段、出るらしいよ」
と軽い口調で返ってきた。
聞けば、
階段を上ってるときに“下から呼ばれる”
っていう噂があるらしい。
「もし呼ばれて振り向くと、
“階段の段の数が増えてる”とかなんとか…」
バカバカしいと思いつつも、
圭介はその日、帰りに階段を意識して数えてみた。
全部で 27段。
何も起きない。
「やっぱり噂だよな」と思った。
数日後の夕方。
いつも通り階段を上っていると、
背後から小さく聞こえた。
「……ねぇ」
圭介はゾッとした。
“呼ばれる”という噂を思い出したのだ。
振り返らず、足早に上った。
気づくと、息が上がるほど急いでいた。
そして段数を数えていた。
……25、26、27、28。
「……え?」
昨日は27段だったはずだ。
怖くなり、一気に階段を駆け上がった。
翌日、階段が本当に28段あるのか確かめるため、
朝にもう一度行ってみた。
恐る恐る数える。
……25、26、27。
そこで終わり。
昨日の“28段目”はどこにもない。
安心しかけた圭介は、
ふと階段の横のコンクリ壁に貼られた紙に気づいた。
【注意】
昨夜、この階段で怪我人が出ました。
段差に引っ掛けた可能性があります。
現場には血痕が残っていましたが、
倒れた方の姿は見つかっていません。
張り紙の一番下に、鉛筆のような細い文字で
誰かが書き足していた。
「昨日、28段目に立ってた…あの女の人?」
圭介は、また後ろから
「ねぇ」
と呼ばれた気がした。
階段の女 久米橋花純@旧れんげ @yoshinomasu
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