神王融合を果たした俺は、最強ショタになって悪魔世界を無双する 〜子供しか魔剣を使えない世界で、神になった俺は子供を助けたい(ロリコンではない)〜

いふる〜と

日本横断編

第1話 少女と悪魔とショタ





『ぐっ…!!』


テレビの先で、少女が腹に穴を空けて呻く。

血を吐いて、苦悶の表情を浮かべて、その先でビルのような大きさの怪物を撃破する。


『いやー、流石はA級魔剣士の奏さんですね。』


『単独でのA級悪魔三体撃破は、A級では彼女にしか出来ないな。次期S級は奏さんだろう。』


その映像が終われば、マイクを持った大人たちが少女を褒め称えていた。そして、治療を終えたその少女は、コメントを残した。


『皆さんのお役に立てて、光栄です。』


その言葉が聞こえた瞬間、怖気が走る。

唇が切れるほどに強く噛み、拳を握る。


(どいつもこいつも…頭おかしいんじゃねえのか…!!)


子供に命を懸けさせて、血を流させて、勝ったら褒め称える。


自分たちは、戦おうとすらしない。


「…ッハ、俺も、同じだったな…」


心底、気持ち悪い。

点滅する電気を落として、泥のように眠った。





◆◇◆◇◆◇





「昨日のカラオケ、マジ楽しかったね!」


「それな!またイツメンでいきたいなー!」


東京某区、夕方の帰り道は喧騒に包まれていた。相変わらず、人が多い。


(…もう、5年前、か。)


楽しそうにしている子供を見ると、思い出す。

5年前のあの日、8月15日、夏休み。


猛火に包まれた車と、取り残された二人。

赤黒い血液が彩る窓から、妻と娘の顔が見えていた。


『…ごめん、ね…』


爆発した。


肉も、骨も、何も回収できなかった。

ただ残された灰だけが、家にある。


(…駄目だな、いつまでも引きずりやがって。)


頭をブンブンと振り、左胸に手を入れる。

取り出したライターに火をつけ、タバコを近づけると、ポケットのスマホが振動した。


「どうしました?」


『大変だ、月宮。新人のバカが取引先の偉いさんにお茶ぶっかけやがった。』


「はぁ!?」


『これから謝罪に向かうんだが…あの新人の教育担当、お前だろう?ついてきてくれ。』


電話の相手は、いつも目にクマを浮かべている上司だった。その声はやつれていて、もうヘロヘロなことが分かる。


…正直、個人的には、行きたくないが…


「わかりました、すぐに向かいます。」


『っ本当に助かる!いつもありがとうな、月宮。』


その言葉を皮切りに、電話を切る。

緩めていたネクタイを締め直して、腕時計を確認して走る。


(俺だって、新人のときは、散々世話になっただろうが。)


国の宝とか、この世で一番大切なものとか。

よく、色んな人が話題に挙げるテーマだ。


俺は思う。


それは、若者の未来だ。

まだ未熟で、可能性があって、希望を持っている彼等彼女等こそが、守るべき大切なものだ。


…俺は、一度、守れなかったんだ。


だから、どれだけ面倒でも走る。

会社のビルが見えたあたりで、息が切れた。

呼吸を整えるため、僅かに立ち止まる。




―――――――ドゴンッッッ!!!!




『グアアアァァァッ!!!!』




劈くような爆裂音、大気を揺らす雄叫び。

全身が寒さに満たされ、恐怖が空間を染め上げる。


声の方向を向けば、ビルのようなサイズの、漆黒のオオカミが遠吠えしていた。


(『悪魔』…!!)


オオカミの顔面には目が六つ、口が四つ。

背中から大量の人間の腕が生えていた。



―――――悪魔。人間の悪感情が魔力を帯び、出現する人類の敵対生物。人間を塵のように扱うレベルの、格の違う化け物。



オオカミが、爪を振り上げ、こちらを見る。


その時、死を感じた。



「させないわ!!」



鋭い金属音と共に、振り下ろされた爪が一振りの剣に弾かれる。それを行ったのは、まだ『中学生』にも見えるような、女の子。


紅色の長髪を閃かせて、俺の前に立ち塞がる。

震えのない声で、叫んだ。


「アンタの相手は私よ!!」


魔剣士。二十歳以下の子供にしか発現しない特別な力『魔剣』の使い手にして、唯一悪魔に対抗できる職業。


カッコいい。素直に、そう思う。

そして、同時に…


(なに、してんだよッ…!!)


拳を強く握り締めて、地面をたたく。

すると、オオカミは腕を鞭のように伸ばして周囲を薙ぎ払った。


「避難しなさいッ!!死ぬわよ!!」


建物が砂のように壊され、瓦礫が飛び散る。

その瓦礫たちは、少女が剣を持って駆け出すと同時に、全てが『凍り付いた』。


氷結された瓦礫の全てが、空中で停止する。

物理法則とか、慣性の法則とか。


全てが、機能しない。

それこそが、魔剣の権能。


『グアアア!!!!』


しかし、オオカミはどうやら高位の悪魔のようだ。氷結を意にも介さず、尋常ではない速度で駆け抜け、少女を剣越しに殴り飛ばす。


建物をいくつも貫通し、吐血する少女。

今のじゃ、絶対に背骨とか肋は折れている。


なのに、少女は退かない。


『グアアアァァァ!!』


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」


剣と爪が、拳と牙が舞い踊る。

互いの肉体を削り合い、命を散らし、血をまき散らす。


俺は、座り込んでいた。


(…おい、なにを、してんだよ…)


唇を噛みきり、血が噴き出す。

拳を握りしめすぎて、皮を突き破る。


なのに、身体が動かない。

ずっと怖くて、立ち竦んで、手を伸ばせない。



「あのときと、同じじゃねえか…」



幸せにすると誓った、最愛の妻。

守り育てると誓った、最愛の娘。

二人が危ないときに、俺は動かなかった。


炎が、死が、怖かったから。


(若者の未来は、宝だろうが…!!)


あぁ、怖い。

足が震えて、心が怯えて、どうにかなっちまいそうだ。


…でも。


(ここで止まる方が、怖え…ッ!!)


突如現れた悪魔、命を懸ける子供。

備えも覚悟も、何もない。


それが、どうした?

決断は、いつもいきなりやってくるものだって、俺は知ってるはずだ。


『グオオオオアア!!』


オオカミが叫び、両前足を振り上げる。その風圧で、建物が吹き飛ぶ。


少女が駆け出し、一閃。

オオカミの巨木のような腕が一本、派手に吹き飛ばされる。


『グオオオオ!!!!』


それは、囮。

懐に飛び込んできた少女が、残った前足で吹き飛ばされる。


俺の、目の前だった。


オオカミは、トドメを刺そうと爪を振り上げる。


「あっ…」


少女の、声にもならない息が小さく漏れる。

殊勝で、どれだけ傷を負っても、人々の為に立ち向かった少女が、初めて恐怖を見せた。



……やっぱ、怖いんじゃねえか。



「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!」



叫び散らかして、恐怖をかき消して、一歩を踏み出して少女の肩を引く。


そして、少女の前へ。振り下ろされた爪に向かって、仕事用具しか入っていないバッグを押し付ける。


「うぐぅっ…!?」


巨大な爪が、俺の体を大きくきり裂く。

血が大量に噴き出し、激痛と途轍もない熱さに涙が出る。


(死んで、ねえ…ッ!!)


バッグを投げたおかげか、それとも眼中にもない虫が飛び出たからか。あの爪は、俺の命を刈り取るのに少し届かなかった。


血の池を作るほどに吐血し、ふらりとする。


それでも、倒れない。


「アンタ、なにして…!?」


「下がってろよ、お嬢ちゃん。正義のヒーローってのは、大人の仕事だ。」


ビクビク震えて、失禁しそうで。

醜態を晒して尚、オオカミを睨みつける。


(せっかく生きてたのに、悪いな、二人とも…俺も、案外早く、そっち行きそうだわ…)


不敵に笑って、首に親指をあてがう。


勢いよく、振り抜いた。



「俺は月宮太陽ッ!!クソ情けねえ大人の名前だ覚えてから殺せぇッ!!」



オオカミの爪が、容赦なく振り抜かれる。

今度こそ、俺を殺し切る絶対の一撃。

最期まで、目を開けて笑い上げる。



―――――究極にバカじゃのう、お主。



頭に響いた、妖艶な女の声。

それが意識に引っかかる瞬間…



『グオオオオ!?!?』



純白の炎が、オオカミの残った前足を焼き尽くして消え去る。刹那の間で、灰に還すほどの圧倒的熱量。



そして、その女は現れた。



『だが、妾はそんなバカが何より好きじゃ。』



高位の神官と言うべき純白の法衣に、背中から生えた2枚の『炎の翼』。その瞳は、鳥のように鋭くも美しい。


そして、その頬には『炎の紋章』が在る。


『さぁ、妾を使ってみせよッ!!』


その女は、全身を炎に変える。すると、その炎が二振りの双剣と化して俺の手に収まる。


握った瞬間、力の流れを感じた。

これこそが、『自分』であると認識できるほどに、強い親近感。


(何が起きてんのか、全くわかんねえ…!!)


双剣を強く握りしめ、血を吐き、笑う。

僅かに下げた右足で、地面を蹴り抜く。


「足掻かせてもらうぜッ!!」


何の力とか、あの女の正体とか、そういうのはどうでもいい。


今は、あの少女を助けることだけだ。


『グオオオオ!!!!』


先程の一撃は、俺をいたぶる為に手加減したものだったのだろう。さっきとは、格の違う速さで爪が振り抜かれる。


…見える。


地面を蹴り抜き、跳躍して回避。

オオカミの驚く顔を確認することなく、そのまま駆け抜ける。


大怪我をしているというのに、人生史上最も身体が軽い。車など、容易く越した速度域で走りオオカミを目前にとらえ…


跳躍。



「くたばれやァァァッ!!!!」



一閃。


技術もクソもない、根性だけの一振り。

全力で二本の双剣を振り下ろす。すると…



――――――仕方ないのう、妾が手伝ってやろう。



『グオオオオアア!?!?!?』


振り下ろした双剣が、炎を纏って巨大化。

異常なリーチと火力を手にした双剣は、オオカミを三等分に切断した。


バンッ!!!!


そして、爆発する炎。三等分したというのに、オーバーキルの一撃を放ち…


(あ、これやば…)


身体から一気に力が抜けて、空中から地面へ思い切り落下する。普通に死んでもおかしくないが、なんとか生きてるみたいだ。


「あぁ…痛すぎ…」


大量の血液と、痛む骨や肉。

遠のく視界と意識に、死をなんとなく感じる。


でも…


(今度は、立ち向かった…!!)


何もできずに死ぬよりは、遥かにマシだ。

不思議な力と声、そして女に感謝しようと手を合掌する。


その手は、異様に小さかった。


「…え?」


声も、聞いたことがないほどに高い。

上半身だけをなんとか起こして、近くの窓ガラスの破片を見つめる。



そこには、炎の翼を背中から生やした、血だらけの美少年がいた。



……………???



「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」



もう、何が何だか、わからんかった。






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