第3話 民俗学者 佐賀慶一朗『「水の神」と山間農業の関連性』(1997年)

 (前略)


 古くから日本の人々は、自らの身の回りを囲む”自然”に神の姿を見てきた。恵みを齎す山に、潤いを与える川や湖に、季節の便りを届ける風に。人間の能力を遙かに超越した自然の現象の数々を、人々は正に人智を超えた神として崇め奉ってきたのである。

 山間部の集落、村々において殊更重要視されたのが山と川である。山には人間が暮らす上で重要な衣食住の材料となるものが揃っていた。山間部の人々は山による恩恵をその身に直に受け、山の恩恵を枯らさぬよう自然保護にも努めた。

 また川も山と同様に崇められた。川は生活用水や農業用水として利用され、木材を運ぶ交通網としても利用された。しかし、川は恩恵だけでなく水害という災いも齎した。故に川は『人に恩恵も災いも齎す気まぐれな存在』とされ、その機嫌を損ねないよう丁重に崇め奉られた。この存在を『水神すいじん』、または『水神みずがみ』、『水神みなかみ』と呼称する。

 基本的に大きな川や湖と言った水源がある村にしか水神はおらず、水の恩恵にあずかっていない地方部で水神の存在が確認された例は無い。


 (後略)

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