薄汚れた灰空の下で

吉太郎

第1話 罪

 あの日の事は、まるで昨日の事のように覚えている。

 高校最後の授業を終えた放課後、雪か雨でも降りそうなほど空が濁っていた日だった。

 私たちはいつものように人気の無い階段の踊り場で、アイツと遊んでいた。どんくさくて、根暗で、可愛げの無い女。私たちはその女をして、写真を撮ってやった。どうやら泣くほど嬉しかったらしい。「他の人にも見せてあげよう」と言うと、アイツは「やめて」と手を伸ばしてきたので、友達がけた。その弾みにアイツは体勢を崩し階段から転げ落ちた。

 階段下でうずくまるアイツの姿をひとしきり笑った後で、私たちは異変に気づいた。

「アイツ、動かなくない?」



 ―――――ザッ、ザッ、ザッ。

「ねえ、やっぱりまずいって。早く誰かに知らせた方が・・・」

「うるさい」

 ―――――ザッ、ザッ、ザッ。

「ど、どうしよう私、私が蹴って、蹴ったから・・・・!」

「うるさい」

 ――――ザッ、ザッ。

「今のうちに救急車とか、呼んだ方が・・・!」

「うるさい!!! もう死んでるよ!!」

 私の声が校舎裏の山中に木霊する。

「もう死んでるの! 死んじゃってるの! ここに警察なんか呼んだらどうなるか分かってる? 絵里だけじゃない、聡子も私も捕まるの! これまでコイツにやって来たこと全部明るみになって、家族にまで迷惑がかかる!」

 私は2人の目を交互に見つめた。

「絵里、東京の化粧品会社の内定貰ってるんでしょ? こんなつまらないことで将来台無しにしていいの?」

「・・・・・嫌だ」

「聡子も、東京の大学に推薦で行くんでしょ? ここで推薦取り消されて、躓きたくないでしょ?」

「・・・・・・そうね」

「私もそう! コイツのせいで人生棒に振りたくない! 第一、コイツが私らに向かってきたのが悪いんでしょ? 絵里は悪くないし、私らも悪くない。コイツの自業自得。分かった。

 2人は顔を見合わせ、静かに頷いた。

「じゃあ、ほら。穴掘るの手伝って。さっさと埋めちゃお」


 ――――――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

 高校最後の冬。私たちは校舎の裏山に同級生を埋めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る