第3話

 だから、私が一般的なデートを教えて改心させる。まあ、そんなの知らないけど。


「と、いう訳で。外食かショッピングでも行こうか」


高校から出て、自宅のある駅の方に向かいながら私はそう言う。七限まであった事もあり、外は既に真っ暗だった。


「お金、無い……」


身も凍りそうな冬の寒さでふるふると震えながら、ユズキは静かにそう呟く。


「だってヒモだもんね。ヒモじゃ無くなれば未来の問題も解決するんじゃ?」

「仮にそうしたとしても、人との積み重ねが出来すぎているから」

「その未来は単体のイベントが原因じゃ無くて結果的な事か……」


そう言いながら、学生鞄の中から財布を取り出し中身を見る。

えっと、今の私の残金は……って。一応付き合ってると言っても、流石にここまでする義理は無いか。ついつい困っていたり一人ぼっちの人がいれば手を伸ばしてしまうのが私の癖だ。そうやって藍里や由芽とも仲良くなった。


「駄目、やっぱり他の事しよう」

「……けち。お腹、空いてたのに」


消え入りそうな声が聞こえたからユズキの顔を見てみると、僅かに頬を膨らませ今にも泣きそうな顔になっていた。年齢的には二十歳くらいなんだよな?そんなに泣きそうな顔しなくても良いのに。そこまでされたら普通の人は折れる。


「はあ……」


残金千五百円で、何か出来るか。晩御飯も買わなきゃだし、軽食くらいなら……。

正しい付き合いを教えて堕とす代償としては安いか。


「そういえば何してたの、こっちが授業終わるまで」

「待ってた。荷物も何も、持って来てないし」


肩にぽてんと、頭を預けられる。


「……密着すれば惚れるなんて思わないでよ?」

「そんなつもり、無い」


そう言いながらもユズキの声音は上がる。

この感じは、やりなれてるから習慣化してしまってる奴だ……!



 密着され、押し返してを繰り返しながら駅に着くと、ホームに上がる階段の手前にクレープ屋があるのが目に付いた。


「あんまりお金無いから、クレープとかで良い?なんか女の子におにぎり食わせるのもアレだし」


玉子焼き一つしか今日ご飯を食べていないユズキの顔が、ぱあっと明るくなる。


「ありがと。好きだよ、柚希」

「調子乗ったらそれかよ……」


そう言い捨て、ニコニコ笑顔で手を振る彼女をちらりと一瞥した。確かに、軽く好きとか言われるとちょっと嫌な気持ちになる。藍里の言い分も分からなくは無いかもしれない。



と、思っていると。


「あ、藍里」


クレープ屋の近くに、昼休みの後からずっとむすりとしていた藍里の姿を見た。


「柚希ちゃん……。さっきはごめん」


私に気付いた藍里は、か細い声でそう謝る。


「いや、私の方こそ悪かったから。怒ってた理由、ちゃんと聞かせて」


あの死んだような目。もしかすれば、未来で何らかのトリガーになるのかもしれない。


「その。色んな人に好きって言ったり触ってたりすると、ちょっと何とも言えない気持ちになるというか」

「それは……」


私は、別に好意を示す事は何も悪く無いとは思っていた。だけどあのユズキとのやり取りに近い事を、私は普段藍里や他の友達にもしている。それを他の知らない子にもやっている、という状況を見られれば、良い気持ちはしないかも。


「でも分かってる、柚希ちゃんは困ってる人を見捨てられないんだよね。私の事も、そうやって助けてくれたんだし」


俯きながら、藍里はぎゅっと肩にかけている鞄を握る。


「だからさっきの人も、きっと困ってたんだよね」

「まあ、部分的にそう、かな」


実際それはそうではある。だけどやっぱり、自分はこれまで悪い事をしていたような気がしてきて。ベタベタ触って来る未来の自分を見て、今この問題から逃げてはいけない気がした。


「ごめんね、藍里。私はほんとに友達みんなの事が好きだから、それだけは保証させて。絶対、だから」


……友達を、折角出来た友達を失いたくは無い。藍里だって私の事を好いてくれているんだから。


「だから、あんまりその、簡単に触らないようにする。傷付けたく、ないから」


私がそう言うと、こくりと藍里は頷き、少し眉を下げて微笑んだ。


「……うん。じゃあ、また明日ね」


少し身を縮め会釈しながら、藍里は足早に去っていった。


その後私はクレープを買って、ユズキの下へと戻った。近付き過ぎれば今度は別の誰かを傷付ける。もしかしたらそれが刺される原因なのかもしれないと、ふと思った。

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2026年1月12日 18:00
2026年1月13日 18:00
2026年1月14日 18:00

女の子にたかるヒモJDになっていた未来の私が、JKの私を堕としに来ました 伊咲  @Jun1150

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