幼馴染の愛が重すぎて、僕の家の鍵が毎週増える件

冰藍雷夏(ヒョウアイライカ)

第1話 君は僕のストーカー

​「……また、増えてる」


​ 高校二年生の僕、佐藤 和馬かずまは、玄関先で立ち尽くしていた。


 手の中にあるキーケースには、昨日までなかったはずの『最新式の防犯鍵』が追加されている。

 これで僕の家の鍵は合計六つ。もはや金庫室の扉を開ける勢いだ。


​「おかえりなさい、和馬くん! 今日は三分十二秒、帰宅が遅かったね?」

 リビングのソファで、僕の幼馴染——白雪しらゆき愛良あいらが、至極当然のような顔で紅茶を淹れていた。


 彼女は学校一の美少女で、成績優秀、品行方正。……ただし、僕への執着心が「銀河系レベル」であることを除けば。

「愛良……また勝手に鍵を付け替えたのか?」

「勝手だなんて心外だな。最近、近所で不審者(和馬くんに挨拶した女子生徒)が出たって聞いたから、セキュリティを強化しただけだよ?」

「それ、ただのクラスメイトの鈴木さんだよね?」

 愛良はニコリと微笑むと、僕の首筋にスッと手を回した。少しだけ冷たい指先が肌に触れる。


​「和馬くん、浮気はダメだよ? もしそんなことしたら……この家ごと、和馬くんを地下室に作り直さなきゃいけなくなるから」

「発想がリフォーム業者のそれじゃないんだよ」

◇◇◇


​ 翌日の放課後。僕は図書委員の仕事で少し遅くなった。


 ふと視線を感じて窓の外を見ると、校庭の植え込みから、こちらをじっと見つめる愛良の姿があった。

「(……あ、目が合った)」

 彼女は手に、なぜか高性能の集音マイクを握っている。


 僕は慌ててカバンを掴み、彼女のもとへ駆け寄った。

「愛良! なんであんなところにいるんだよ!」

「和馬くんの吐息の周波数を記録しようと思って。これで、和馬くんが嘘をついているか、体調が悪いか、私を求めているかが、0.1秒で判別できるようになるの」

「最後の一つの需要がニッチすぎるだろ」

​ 帰り道、僕は溜息をつきながら彼女と並んで歩く。


 愛良は僕の制服の袖をぎゅっと掴んで離さない。

「ねえ、和馬くん。明日の朝ごはんは何がいい? ちなみに、拒否権はないよ」

「じゃあ、オムレツで」

「ふふ、正解。和馬くんがそう言うと思って、もう最高級の卵を10パック買っておいたから」

「……多すぎない?」

「失敗したら、成功するまで作り直すから。和馬くんには、私が作った完璧なもの以外、食べてほしくないの」

 彼女の瞳は、本気だ。

 怖いくらいに真っ直ぐで、重くて、そして……どうしようもなく綺麗だった。

「愛良」

「なあに?」

「鍵を増やすのはもうやめてくれ。……その代わり、僕がちゃんと君の隣にいるから」

 愛良は一瞬、目を見開いた。

 そして、顔を真っ赤にしながら僕の腕に抱きついた。

「……言ったね? 今の言葉、録音したから。もし破ったら、和馬くんの部屋に二十四時間監視カメラを設置するね!」

「それは今すぐ消してくれ……!」

 重すぎる愛情に振り回される日々。

 でも、彼女の「好き」がこれだけ物理的に重いなら、僕が一生かけて支えていくしかないのかもしれない。




◇◇◇

最後まで読んで頂きありがとうございます。

続きが気になる!っと思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビュー、作者フォロー等々をして頂けると嬉しいです。


新連載です。

最強魔術『無限』を持つ転生魔術師は静かに暮らしたいのに世界がそれを許さない

https://kakuyomu.jp/works/822139842228252049

よろしければ、ブックマーク、星レビュー頂けると嬉しいです!

◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る