星野ヶ丘高校天文部の、答えの出ない放課後
美波
星が一つ多い夜
放課後の天文部部室は、今日も静かだった。
窓は開いているのに、風はほとんど入ってこない。
「……あれ?」
雫が望遠鏡から顔を上げた。
「どうしたの、雫」
千晴が星図から目を離さずに聞く。
「星の数、合わない気がする」
「数?」
そらが椅子にもたれて、興味深そうに身を乗り出す。
「うん。この辺」
雫は空を指さした。
「昨日まで、ここ、こんなに明るくなかった」
「また勘違いでは?」
琴美が紅茶を一口飲む。
「星は毎日、位置も見え方も変わりますもの」
「位置じゃなくて、数」
雫は言った。
「一つ、多い」
千晴が立ち上がり、望遠鏡を覗く。
「……」
数秒、無言。
「千晴先輩?」
そらが聞く。
「……確かに、星図より一つ多い」
「え、ほんと?」
そらは少し笑った。
「それ、面白いね」
「笑ってる場合じゃないよ」
千晴が言う。
「でもさ」
そらは窓の外を見る。
「減ってないなら、良いんじゃない?」
「良くはないでしょ」
「増えた星って、どれですか?」
光莉が静かに聞いた。
雫が望遠鏡をずらす。
「これ」
光莉が覗き込んだ。
「……ありますね」
「さっきまで、なかった?」
「はい」
光莉は即答した。
「今、増えました」
「今?」
琴美が眉を少し上げた。
「いつ増えたか、分かりますの?」
「分かります」
光莉は少しだけ考えてから言った。
「見てたので」
「観測者だね」
そらが小さく言って、少し嬉しそうに笑う。
「理由は?」
千晴が雫を見る。
「分からない」
雫はあっさり言った。
「今日は、そういう日」
「雑すぎるよ」
「だってここ、天文部だし」
しばらく、誰も何も言わずに星を見ていた。
「……ねえ」
そらがぽつりと言う。
「この星、戻ると思う?」
「どうだろうね」
千晴は首をかしげる。
「戻るかもしれないし、戻らないかもしれない」
「観測、続ける?」
「ううん」
雫は頷いた。
「今日は、これで終わり」
部室の電気を消すと、
増えた星だけが、少しだけ強く光っていた。
誰も、それ以上は確かめなかった。
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星野ヶ丘高校天文部の、答えの出ない放課後 美波 @mina_1945
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