『晴子と雨男』【お題フェス·天気】
宮本 賢治
『不思議な2人』
わたしの名前は、
そして、目の前にいるのは、
変な名前だよね。
けど、生まれたときから、
そうなんだから、
しかたない。
わたしたちは、幼馴染。
物心ついたころから、こうして、この部屋で顔を合わせる。
何をするかって?
ジャンケンだよ。
「最初はグ〜!
ジャンケン、ポン!!
アイコでショ!」
晴子=パー
雨男=グー
じゃ、月曜日は◯
カレンダーに書き込む。
それじゃ、次。
あ、雨男がクイッとメガネを上げた。細身の黒縁メガネ。
雨男はメガネをわずらわしいと言う。
けど、そのおかげで、端正過ぎて、冷たい印象を受ける顔立ちが少しやわらかくなっている気がする。
わたしは、雨男のメガネ、キライじゃない。
「ジャンケン、ポン!!」
晴子=グー
雨男=チョキ
雨男はメガネをクイッと上げた後は必ずチョキを出す。
チョロいぜ♪
じゃ、火曜日も◯
そうこうして、1週間分の勝負が終わった。
「ね、かわいいカフェ見つけたんだ。連れてって♪」
わたしは、雨男にお願いした。
「ダメだよ。
また、勝手に抜け出したら、怒られるよ」
雨男に注意された。
けど、あのお店のシフォンケーキ。
メッチャおいしそうだった。
あきらめないぞ!
「お願い、
雨男と一緒にお茶したいよ〜!」
雨男の手を、両手で包むように握って、目一杯お願いした。
雨男、ちょっと顔を赤くして、襟足の髪をイジる。
「しかたないな〜。
ホントにカフェでお茶したら、すぐ帰るからね。」
やった〜♪
···ん、待てよ。
え〜と、確か、今日は水曜日。
カレンダーを確認。
✕
げっ、雨じゃん!
「ね、雨男。
今日の勝負、も一回しよ!」
「ダメだよ。
そんなの!
インチキじゃん」
「だって、
せっかくのデート、
晴れててほしいじゃん!
ね、お願い!!」
「わかったよ。
けど、1回勝負だからな」
雨男がそう言って、
メガネをクイッと上げた。
晴子=グー
雨男=チョキ
わたしは、カレンダーの今日の部分、
✕ → ◯
と書き足した。
ドアを開けて、部屋を出る。
雨男がわたしに続いて、部屋を出た。
ドアの閉まる音。
振り替えると、雨男がただ立っていた。
駅前の通り。
どこにも、ドアなんて無い。
路面が濡れている。
雨上がり。
雲の切れ間から、日が差してきた。
「ね、晴子。
アレ見て」
雨男が指差す先を見ると、空に大きな虹がかかっていた。
「わあ、キレイ♪」
わたしが歓声を上げると、雨男が言った。
「ホント、キレイだね。
ぼく、虹、大好きだよ。
晴子みたいだ」
わたしの隣で雨男が笑う。
サラッとそんなことを言う、雨男、
キライじゃない。
わたしは雨男の手を握った。
雨男はギュッと握り返してくれた。
虹の下、2人はカフェに向かって、歩き出した。
了
『晴子と雨男』【お題フェス·天気】 宮本 賢治 @4030965
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