奥森はSFを書きたい!

奥森 蛍

はじめに

 科学との出会いは何気なしに進学した大学でだった。当時、18歳のわたしは創作者を志していたものの書きたいものが見つからず、どこかで見た誰かの焼き直しの作品ばかり妄想していた。異能もの、歴史もの、たとえばゲームのなかに主人公が吸い込まれて……当時のわたしは大まじめに妄想していたが正直いってそれがわたしの目指していたものかは怪しい。

 進学したのは工学部で『化学』、『生物』、『物理』の専門家が集まってとの旗印のもとに創設された比較的新しい学科だった。1、2年の講義は一つの分野を追求するというよりは広く浅く、化学もやれば物理もやる。生物も分からないなりに学んだ。だから今でも思うのは科学全般を作品に取り扱いたいわたしにとってそこを選んだことはすごく幸運だったかもしれない。


 昔から自分にしかできないことがやりたい、と思いあがった(笑)思考のもとに生きてきたわたしは在籍しながら次第に『自分にしかできないことって何だろう』と思考するようになった。


 作品のことは常に考える、それもものすごい大作を。でもまだ書かない。書けない、心のなかの熱量がまだ足りない。そんな中で運命的な出会いをする。大学3年の時に所属した研究室での出会いだ。

 そこは色素増感型太陽電池のルテニウム錯体という物質を扱っているところで恩師は退官間近のベテラン教師だった。とても実験がお好きな方で、たとえば不真面目な生徒たちが実験に没頭していなくても1人実験室に現れて黙々と研究をしている。面白い論文があれば渡してくれる。実験が上手くいけば目を輝かせて嬉しそうに喜ぶ。わたしは生まれて初めて大人の純粋な好奇心に出会えた気がした。


 この場で一ついっておきたいのが、環境問題に対して悲壮な顔で取り組んでいる研究者は一人もいない。皆が目を輝かせて「自分がいつかやってやるぞ」との気持ちのもとに日夜研究を続けている。だから将来を担う子供たちに向けてわたしはいいたい。科学をやってくれ、科学は面白いぞ! 


 正直な話、わたしは地球を救うのは頭のいい子供たちだと思っている。

 だからその子供たちに向けてわたしは作品を書きたいと思う。彼らが好奇心の名のもとに研究を続けた先にきっと環境問題の解決がある。もちろん現役の大人も負けてはいられないが。

 それがあの学科で仲間たちと学んだわたしに出来ることじゃないかなと微笑みながら。


                        令和8年1月8日 奥森 蛍

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