ネヴァーランド:ゼロから始まる英雄譚

ネヴァーランドヴァーセ

第1話:白の書

  教師がいないと知った瞬間、まだ朝の光が残っているというのに、今日は早く家に帰りたくなった。だが、少し考え直してみると、家に戻ったところでゲームをする以外にやることはない。結局、戻る理由もなく、気づけば足は自然と街の片隅へと向かっていた。かつて一度だけ訪れたことのある、古い書店のある場所へ。


  店内には、埃をかぶった本棚が静かに並び、古い紙の匂いが空気を満たしている。時が止まったかのようなその空間で、無数の本の中から、一冊だけが不思議と目に留まった。


  それは、吊り下げられたランプの淡い光に照らされ、ぽつんと佇んでいた。


  表紙は、白一色。


  題名はない。

  挿絵もない。


  ……奇妙だ。


  俺は一歩近づき、そっと手を伸ばした。指先が触れた瞬間、薄く積もった埃が静かに払われる。そして、表紙の中央に、かすかに刻まれた一つの言葉が現れた。


Neverland


  俺はその本を開いた。


  最初のページは、真っ白だった。


  次のページへと、そっとめくる。


  ――その瞬間。


  紙の奥から、淡い光が滲み出す。まるで、ページの向こう側で何かが息づいているかのように。ページをめくるたび、その光は少しずつ強さを増していった。


  「……なんだ、これ」


  そう呟いた時には、もう遅かった。


  白い光が一気に溢れ出し、視界を埋め尽くす。慌てて目を閉じても、まぶしさは瞼を突き抜け、温かく、容赦なく全身を包み込んだ。身体がふわりと浮かぶ感覚。重力という概念そのものが、静かに手を離していく。


  世界の音が、消えていく。


  そして残ったのは――白。


  静寂に満ちた、白。

  完全で、何もない、白。


  白だけの世界だった。


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