路上占い、あれこれ167【占い師は天敵がいる】
崔 梨遙(再)
嫌な 1847文字 です。
ミナミから引っ越して、もう10年近くになります(まだ10年は経ってませんが)。今、住んでいるのは大阪でも田舎です。
よく行く喫茶店があります。週に1度くらい行きます。行くとママさんや常連客に占いを頼まれます。なので、喫茶店にも筮竹は置いています。
よく行くのですが……その喫茶店には僕の天敵、というか、みんなの天敵がいます。73歳の老婆です。髪は真っ白、自分で髪を切るからいつも虎刈り。いつも同じネルシャツ、どこで買ったのかわからないデニムパンツ、夏はサンダルです。太っています。お腹(胴体)が大きいから手足が短く見えて亀みたいです。
要するに、みんなの嫌われ者です。
何故、嫌われるか? まず暴言や失言が多いからです。ある日、79歳の女性常連客が楽しそうに、
『⭕⭕美術館に行ってきたけど良かったよ』
と言ったら、天敵は言ったのです。
『この歳になったら、後はもう死ぬだけやから、何を見ても意味無いわ!』
『私は生きてる間にいろいろみたいねん! あんたの価値観を押しつけるな!』
喧嘩になってましたが、天敵は暴言や失言が多いくせに打たれ弱いので、面と向かって反論されるとオドオドしておとなしくなります。でも、また調子に乗って暴言や失言を繰り返すのです。
そして天敵は話が長いのです。しかも、毎回同じ内容、親の悪口です。僕は1度、6時間ノンストップのマシンガントークに巻き込まれました。6時間ですよ。勿論、僕は話を聞いていません。何度も聞いた親の悪口だったからです。
『あんた、ちゃんと聞いてる?』
『聞いてません。その話、何度も聞いてるから』
『私は何度でも言いたいねん!』
『僕は何度も聞かされるのが嫌なんです!』
僕はそれから、天敵とは話していません。占いを頼んできますが、内容がどうでもいいことばかり。
『髪を伸ばした方がいいか? 短いままの方がいいか? 占ってくれへん?』
僕は、占いに関しましては、『いつ、誰の、どんな内容でも門をとざさない』と決めていますが、それでも例外として無視しました。
まだ、無視する前、かろうじて最低限のコミュニケーションをとっていた時、天敵は娘さんと別れた旦那の話をしていました。なんと! 天敵は結婚したことがあるらしいのです。そして、一人娘がいます。まあ、結婚していたのは1年くらいらしいですが、あんな女性と結婚する男性がいたことにビックリでした。
そして偉そうに言うのです。
『私は先がわかる鋭い女やから、結婚しても80パーセント離婚すると思ってた。離婚することがわかってた。でも赤ちゃんができた。子供のために戸籍上父親がいた方がええから結婚しただけや』
そこで僕は疑問を口にしました。
『なんで、別れると思ってた相手の子供を妊娠するんですか? 避妊したら良かっただけの話じゃないですか? なんで避妊しなかったんですか?』
すると、天敵は言いました。
『だって……30歳になったら焦るやんか』
え!? 何それ!? 怖っ! 天敵の考えることは恐ろしい……。
また、ある時、ママさんが四柱推命にハマった時に、天敵に頼まれてママさんが鑑定しました。結果を聞きながら一喜一憂する天敵。そこで僕がいいました。
『気をつけないと、刑務所に入る星がありますやん』
すると天敵はこう答えました。
『大丈夫! 時効がある!』
ママさんと僕はドン引き! あんた、いったい何をしたの?
ママさんが四柱推命にハマったのは、僕がまだ店にまだ数回しか行っていない時。最初の頃です。10年近く前ですね。その時、天敵に頼まれて結婚について占わされました。
『来年、再来年がチャンスやけど、それを逃したらもう無い。相手は金は無い。でも金は無くても誰かと暮らしたら寂しくないからそれでいいでしょ?』
『金は無いんか……』
ところがママさんの四柱推命で、40歳から60歳の間にまとまった金が入るとでました。天敵は40歳から60歳の間にお金を手にしていません。天敵はこう考えました。
お金が手に入るはずだった → お金がまだ手に入っていない → これから手に入る → これから玉の輿に乗るはずだ
すごい連想ゲーム。
『私は再婚する! 相手は医者か実業家! 金持ちや! 貧乏人に用は無い!』
僕は『相手は金が無い』と言ったのに。足元を見ないといけない時に、上を見ても仕方ないやろ。と思いつつ、僕はもう何も言いませんでした。関わりたくなかったので。
当時で既に天敵は60代の半ば。それから、天敵婆の婚活が始まりました。今も続いている婚活、それはまた後日談として書かせていただきます。
今宵はこれまでとしたく存じます。
路上占い、あれこれ167【占い師は天敵がいる】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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