天才頭脳バトル

白井ひふみ

第1話 慢心

東大駒場キャンパスの片隅。正門を抜けてすぐの銀杏並木は、今日もエリートたちの喧騒に包まれていた。


「あー、またアイツか……」


「田中。工学部の『棚から東大』。昨日の追試も、鉛筆転がして平均点ぴったりだったらしいぜ」


視線の先には、ベンチで口を半開きにして寝ている男がいた。田中健太。ボサボサの黒髪に、ヨレヨレのパーカー、そして片方脱げかけたサンダル。


周囲からは「運だけで東大に入ったバカ」と揶揄される、学内でも浮いた存在だ。


そんな健太の眠りを妨げるように、一足の磨き上げられた革靴が止まった。


「田中。君のその脳みそは、ただの重りかな?」


現れたのは、法学部2年の神宮寺。学年首席、IQ160を誇るエリートだ。だが、彼の顔は屈辱に震えていた。


先日行われた全学共通のIQテスト。神宮寺のスコアを遥かに上回る「測定不能」を叩き出したのは、この鼻提灯を膨らませている男だったからだ。


「……んぁ? 神宮寺……。何、またその話? あのテスト、最後の方の問題、パズルみたいで楽しかったよ」


「黙れ。君のような『運だけの男』に数値で負けるなど、論理が許さない。田中、僕と本当の知性を競う勝負をしろ。僕が負けたら、この100万円を君にあげよう」


神宮寺は分厚い封筒を叩きつけた。健太は「100万円」と聞いて、一瞬だけ目を細めた。


「100万……。ちょうど新作のガチャ、天井まで回したかったんだよね。いいよ、やろうぜ」

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