SUPER STAR
Rilla.
★
彼は欠伸をした。
腕をぐいっと上にあげ、うーっと伸びをする。
今日はかなり長丁場だったから疲れた。
早く家に帰って眠りたい気分だった。
スマートフォンが着信を知らせる。
タクシーが到着したようだ。
黒い立体マスクをつけて、椅子にかけていたジャケットを手に取り羽織る。
「お疲れー!」
メンバーに声をかけて楽屋を出る。
カバンを斜めにかけ、関係者入口から出ると、そこにはたくさんのファンが待ち受けていた。
手を振りながら「またね」と適当に声をかけてタクシーに乗り込む。
「とりあえず出して」
「かしこまりました」
短く会話してからタクシーが発進する。
その間にスマートフォンを操作しメッセージアプリを開く。
何件かメッセージが来ている中から「サナ」という名前を選んで既読をつける。
『お疲れ様!いつものところで待ってるけど来られそう?』
20分前のメッセージだ。
『いま出たところだから、15分くらいかかる』
慣れた手付きでメッセージを送るとすぐに既読がついた。
『わかった!まってるね』
早速の返信に思わず顔がにやける。
『寒くなってきたから暖かくして待ってろよ』
素早く返信を返すと運転手に声をかける。
「その信号の手前にあるビル。そこで下ろしてほしいんだけど…」
「後ろの車、巻きますか?」
「うん、よろしく」
後ろからタクシーがついてきていた。
こんな狭い路地になにか用事があるのだろうか?まさかそんな訳はない。追っかけだ。
運転手はこういったことに慣れているようで、10分程度で追っ手がバックミラーから消える。
目的地で車を降りると、冷え切った夜気が肺を刺す。
首元に光る銀のネックレスを引き抜き、その先端——小さな鍵を、古びた南京錠にねじ込んだ。
鉄が擦れる不快な、けれど二人だけを招き入れる鈍い音が夜に響く。
キーっと音を立てて外階段の扉が開く。
素早く入り込み、中から南京錠を閉じる。
酷使した肉体には疲れが溜まっているが、まるでそんなものはないかのように軽やかに階段を登る。
最上階、屋上への扉を開けると、ネオンに照らされて儚く光る彼女が見える。
「ごめん、おまたせ」
彼女がゆっくりと振り向く。
「ううん、大丈夫」
彼女の元へと歩みを進め、ゆっくりと抱きしめる。
「どうしたの?」
彼女のくぐもった声が聞こえ、それに短く返答する。すると彼女がクスッと笑って
「お疲れ様」
そう言って彼女の細い腕が抱きしめ返してくる。
少しだけ力を強めて抱きしめ返すと「苦しい」とちょっとしたクレームが入る。
軽く謝りながら腕を解くと彼女と見つめ合う形になった。
街明かりが彼女の顔をぼんやりと照らす。
その雰囲気に呑まれるようにふたりは熱くキスを交わした。
この逢瀬だけは、この時だけは、自分がただの男だと思える。
彼女の細い指先が布越しに胸筋を撫でる。
その指が伝うところから痺れるような快感を覚え、俺はもう一度彼女にキスを落とした。
二人しか知らない、特別な場所。
ここだけが俺の憩いの場所だった。
SUPER STAR Rilla. @rilla_kthb
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