【短編】ババアの乳が見てぇ

むーん🌙

第1話 ファーストババ乳チャンス

——ババアの乳が見てぇ


 突然こんなことを言うとやばいやつだと思われるだろうが、これには歴とした理由がある。根拠といっても良い。この世で成人男性が最も見難いもの、それはババアの乳である。恐らく若い女の乳を見るよりも遥かにハードルが高い。なぜなら見る機会がないからだ。


——うーむ……


 俺は顎に手をやり、考え込む。果たしてババアの乳は本当にしわくちゃで垂れているのだろうか。昔ギャグ漫画で読んだ記憶がある。ババアがしわくちゃの垂れた乳を縦横無尽に振り回していた。子供時代、あんなもので爆笑している場合ではなかった。ちゃんと考察するべきだったのだ。ババアの乳について。あれが果たして真実を描写したものなのか。それとも、空想の産物であるのか。それを確かめる方法はただ一つ。俺がババアの乳をこの目でしかと見ることだ。


カラカラカラカラ


「……」


 そんなことを考えて公園のベンチに座っていると、俺の目の前をこれみよがしにババアが通り過ぎていく。九十歳程だろうか。腰が曲がり、歩行器に体重を預けて歩いている。そして、歩行器からはカラカラとした音が鳴っている。


——声をかけてみるか……?


 思い立ったが吉日という言葉がある。これが俺のファーストババ乳チャンスだ。「すいません、ちょっと乳を見せてもらえませんか?」と声をかければ、「はいはい、どうぞ」と言って見せてくれるだろうか……。


——いや、ダメだ……!!


 流石に失礼すぎる。相手はババアといえどレディだ。初対面のレディに「乳を見せてもらえますか?」などと話しかけていいわけがない。事案確定だ。ネットニュースになってしまう。「二十代男性が九十代女性に『乳を見せてもらえませんか?』と声をかける事案が発生」と言う見出しで拡散されてしまう。ネット民の遊びの標的になってしまうこと間違いなしだ。ダメだ。くそぅ、違うんだ! 俺はいやらしい意味ではなく、ババアの乳がどうなっているかを純粋に探求したいだけなんだ。


「こんにちは、良い天気やねぇ」


「はは……。そうですね」


カラカラカラカラ


 俺はファーストババ乳チャンスを見送ることにした。仕方がない。そして、やはりババアの乳を見ると言うのは難易度が高い。ハンターハンターなら達成難度SSといったところだろう。それほどババアの乳というのは見難いのだ。


——はぁ、俺が男なばかりに……


 もし俺が女だったなら、銭湯にでも行けば一発でクリアーだっただろう。俺が銭湯に行っても、ジジイの乳を拝むことしか出来ない。ダメだ。ダメなんだ。ジジイの乳じゃ……。ババアじゃないと……。ん? 銭湯……?


——はっ、そうか!!


 俺は以前友人が話していたことを思い出した。


『B町のB温泉が混浴だって聞いたから、バスで遥々行ったんだけど、ジジイとババアばっかだったわ。セクシーなお姉さんと出会えると思ってたのに……』


——これだ……!!


 俺は公園のベンチから立ち上がる。混浴だ。混浴に行けば、ババアの乳が見られるに違いない。俺は唐突に飛来したセカンドババ乳チャンスに色めきながら、友人が話していたB温泉の場所を調べた。


——今から行っても間に合うな……


 善は急げだ。ババアの乳が俺を待っている。

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