空想大好きミナミちゃんの冒険話

三毛猫

ミナミちゃんのお話

 ミナミちゃんは小学一年生。

 お話を作るのが好きな女の子だ。

 強い風が吹けば傘で飛んで旅をするお話を考え、雨が降れば雲が泣いているお話を空想する。今日も学校の帰り道でお話を探してキョロキョロしていた。


 家の近くの三角公園まで来た時、泣き声が聞こえてきた。小さな女の子の声だ。気になって公園の中に立ち寄ると、そこには知っている女の子がいた。


 ハナちゃんはミナミちゃんの一つ下で幼稚園が一緒だった。ハナちゃんの家は幼稚園の近く。でも、この公園からは少し離れている。


「ハナちゃんハナちゃん、どうしたの?」

「あ、ミナミちゃん、ハナね、迷子なっちゃったの」


 しゃっくりをしながらハナちゃんは答えてくれた。


「来年、一年生になるから歩く練習をしようとしたの。でも、道がわからなくなっちゃった」


 そういって、ハナちゃんはますます泣いてしまった。


「ハナちゃん、わたしと一緒に帰ろう。幼稚園の近くまで送ってあげる」


 ミナミちゃんはランドセルを背負ったまま、ハナちゃんの家の近くまで一緒に行くことにした。


「手をつなごうね。あっちの道は車がいっぱいだから」


 ふたりは手をつないで歩きはじめた。ハナちゃんはまだ鼻をぐずぐずと鳴らし泣いている。ミナミちゃんは楽しいお話をすることにした。


「ハナちゃんハナちゃん、見て。道路がキラキラしているよ」

「ほんとだ、なんだろう」


 この前、道路工事をしていてそこに新しいアスファルトが敷かれ、太陽の光でキラキラして見えた。

 ミナミちゃんはハナちゃんにお話を聞かせてあげた。


「あのキラキラはね、空から降ってきたお星さまのかけらなんだよ。ここはこの間、工事をしていたから、かけらごと道路に埋めちゃったんだね。キレイだね」

「うん、キレイ」


 ハナちゃんはちょっとだけ笑ってくれた。

 でも、幼稚園まではまだまだ。


「足がつかれてきたよ」


 ハナちゃんがまた泣きだしそうになる。

 ミナミちゃんはまたお話を考えようと周りを見回した。すると、空き地に花が咲いている。その花はアザミ。うすいムラサキの丸い花は茎に小さなとげがある。


「ハナちゃん見て見て。アザミだよ。まあるいポンポンの花だよ。でも、茎にはとげがあるから気を付けて」

「かわいい―ーーいたっ」

「大丈夫?わたしがとるね」

「ミナミちゃん、痛くない?」

「大丈夫だよ。とげは小さいし、さわっていたらしなしなになるよ」


 ミナミちゃんは茎を少しこすってハナちゃんが持ちやすいようにしてあげた。


「はい、どうぞ。お母さんのおみやげにしようね」

「うん、ありがとう」

「あのね、アザミの花はきっと、妖精さんがポンポンを持って踊りたいから植えたのかもしれないね。だからとられないようにとげをつけたのかな?」

「妖精さんが踊るの?楽しそうだね」


 アザミの花を二本持って、おみやげだから早く帰ろうとハナちゃんを歩かせる。途中で会った野良猫を見てはお話を作り、落ちている手袋をみつけては、笑い話を聞かせて歩いた。ハナちゃんも幼稚園で習った歌を歌いながら頑張って歩く。

 ミナミちゃんの家はとっくに通りすぎて少し疲れたけど、幼稚園まであともうちょっと。あの角を曲がったら見えてくる。


「ハナちゃん、もうちょっとだよ。がんばって」

「うん、もうすぐで家の近くだよ。ここ知ってる」


 幼稚園が見えてきた。門のところに大人が立っていた。


「あ、お母さん!」

「ハナちゃん!」


 いたのはハナちゃんのお母さんだった。遊びに行って帰りが遅いハナちゃんを探していたみたいだった。


「お母さん、おみやげだよ。ミナミちゃんがとってくれたの」

「まあ、ありがとう。ミナミちゃんも久しぶりね。もしかしてハナちゃんを送ってくれたのかしら」

「うん、ハナちゃんね三角公園で泣いてたから一緒に帰ってきたの」

「そうだったのね。ありがとうミナミちゃん。すっかりお姉さんね」


 ミナミちゃんは少し顔を赤くして照れてしまった。そうして思い出す。ミナミちゃんも家に帰っている途中だったことに。


「私も帰らなきゃ。バイバイ、ハナちゃん」

「バイバイ、ミナミちゃん」

「ハナちゃんを送ってくれてありがとうね。ミナミちゃんも気を付けて帰ってね」


 ミナミちゃんは手を振って来た道を急いで戻る。ランドセルをガコガコと鳴らしながら走って帰った。


「ただいま、お母さん」


 玄関で大きな声で奥にいるお母さんに帰ってきたことを知らせた。


「お帰りなさい。少し遅かったね。寄り道してたでしょ」

「うん、冒険してきたんだよ」


 ミナミちゃんは手を洗いながらお母さんにいった。そして、おやつを食べながら今日の冒険のお話を聞かせてあげるのだった。



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