第二十二章 新たな夜明け
魔力炉が停止した瞬間、イグニス工廠全体が闘いを止めた。
「敵の魔導兵器が、動きを停止しました!」
「何が起きた……」
戦場に、静寂が広がった。
正義は、崩れ落ちる魔力炉の中から、エルザとマルコに救い出された。
「マサヨシ! しっかりしろ!」
「……大丈夫だ」
正義は、空を見上げた。
夜明けの光が、差し込んでいた。
「終わった、のか……」
戦いは、連合軍の勝利で終わった。
魔力炉を失った帝国軍は、戦闘能力を喪失。各地で降伏が相次いだ。
だが、正義は——
「これで終わりじゃない」
リリアナに、言った。
「どういう意味ですか」
「帝国を倒しただけでは、何も変わらない。これからが、本当の始まりだ」
正義は、立ち上がった。
「帝国の技術を、世界中に広める。そして——」
仲間たちを見回した。
「『技術を正しく使える人間』を、もっともっと育てる」
エルザが、微笑んだ。
「相変わらず、大変なことを言うな」
「ああ。だから——」
正義は、手を差し出した。
「一緒に、やってくれるか」
エルザは、その手を握った。
「当然だ。今更、逃げられると思うなよ」
グレンも、手を重ねた。
「俺も、付き合う」
ガンドルフも、リリアナも、マルコも。
「俺たちは、仲間だ」
それから、十年の月日が流れた。
カルダニア王国の首都、ハイネス。
かつて「荒廃した村」と呼ばれた場所は、今や大陸有数の工業都市に成長していた。
「マサヨシ先生、次の講義の準備ができました」
若い女性が、声をかけた。
「ああ、ありがとう」
正義は、教壇に向かった。
ここは、「カルダニア工科大学」。正義が設立した、世界初の工学教育機関だった。
講堂には、各国から集まった学生たちが座っていた。人間、ドワーフ、エルフ。様々な種族の若者たちが、真剣な目でノートを構えている。
「今日の講義は、『品質管理の基礎』だ」
正義は、黒板にチョークを走らせた。
「品質とは何か。それは——」
教室を見回した。
「お客様の期待に、応えることだ」
学生たちが、熱心にメモを取った。
「そして、品質を守るために必要なのは——」
ガンドルフ、今は大学の鍛冶学科長を務めている彼が、教室の後ろで見守っていた。
「『仕組み』と『人』だ」
講義が終わった後、正義は大学の屋上に上がった。
眼下には、活気ある街並みが広がっていた。
工房から立ち上る煙。行き交う人々。そして、遠くには——
「今日も、平和だな」
「そうですね」
隣に、リリアナが立っていた。
今や彼女は、カルダニア女王として国を治めていた。だが、時間を見つけては、大学を訪れていた。
「マサヨシさん」
「はい」
「あなたは、幸せですか」
正義は、少し考えた。
前世では、幸せとは何か、考える暇もなかった。ただ働いて、ただ疲れて、ただ——死んだ。
「……ああ、幸せだ」
正義は、微笑んだ。
「俺の仕事が、誰かの役に立っている。それが、わかる。毎日、実感できる」
「良かった」
リリアナも、微笑んだ。
「私は、あなたをこの世界に連れてきたことを——誇りに思っています」
「俺を? あなたが?」
「ふふ、秘密です」
リリアナは、いたずらっぽく笑った。
夕暮れ時。
正義は、自分の工房——いや、今は「記念館」となった、あのハンマーシュタイン工房を訪れた。
「おう、マサヨシ」
工房の前で、エルザが待っていた。
彼女は今、王国最大の製造企業「ハンマーシュタイン・インダストリーズ」の社長を務めていた。
「久しぶりだな」
「ああ。忙しくて、なかなか来られなかった」
二人は、工房の中に入った。
かつて正義が「5S」を導入し、治具を作り、エルザに技術を教えた場所。
壁には、当時の写真や設計図が飾られていた。
「懐かしいな」
「ああ」
「あの頃は、必死だったな。十日で銀貨五十枚を稼ぐなんて——」
「無茶だった」
二人は、笑い合った。
「なあ、マサヨシ」
「なんだ」
「ありがとう」
エルザは、真剣な目で言った。
「あんたが来てくれたから、私は——今の私になれた」
「俺もだ」
正義は、エルザの手を取った。
「お前がいなければ、俺は何もできなかった」
二人は、しばらく無言で立っていた。
そして——
「さあ、帰るか」
「ああ。明日も、仕事だ」
二人は、工房を後にした。
空には、一番星が輝いていた。
正義は、空を見上げた。
『……ありがとう』
心の中で、呟いた。
あの守護者に。この世界に。そして——
『俺に、もう一度の人生をくれて』
正義は、歩き出した。
新しい日が、また始まる。
そして、彼の「モノづくり」は——
これからも、続いていく。
【完】
工作機械製造業×異世界転生:異世界転生したら生技(セイギ)の神様になっていた件 ~追放された中小企業エンジニアが「モノづくり」で世界を救う~ もしもノベリスト @moshimo_novelist
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