第十四章 初陣
二週間後。
試作一号機の改良は、ぎりぎり間に合った。
だが——
「報告です、王女殿下」
伝令が、息を切らせて工房に飛び込んできた。
「帝国軍が、国境を越えました。魔導兵器、三機を含む部隊です」
リリアナの顔が、青ざめた。
「三機……」
「目標は、この村の方角だそうです」
正義は、立ち上がった。
「迎え撃つ」
「マサヨシさん!」
「他に選択肢がありますか」
正義は、試作機を見上げた。
「こいつの性能を試す、絶好の機会だ」
「でも、三機に対して一機では——」
「だから、工夫する」
正義は、地図を広げた。
「正面からぶつかれば、負ける。だが——」
地図の一点を指さした。
「ここで、迎え撃てば」
「……峠道、ですか」
「ええ。狭い道では、数の優位が活かせない。一対一に持ち込める」
リリアナは、しばらく地図を見つめていた。
そして——
「……わかりました。賭けましょう」
翌日の早朝。
峠道に、試作一号機が陣取っていた。
操縦するのは、正義。
「……来た」
前方から、地響きが伝わってきた。
帝国の魔導兵器が、姿を現した。
「でかい……」
帝国の機体は、試作機の二倍近い大きさがあった。全身を覆う重装甲。その威圧感は、まさに「兵器」だった。
「カルダニアの新型か」
帝国機のスピーカーから、声が響いた。
「たった一機で、我々を止めるつもりか。笑わせる」
三機の帝国機が、ゆっくりと前進してきた。
「降伏すれば、命だけは助けてやる。どうだ」
正義は、答えなかった。
代わりに——
操縦桿を、強く握りしめた。
「行くぞ」
試作機が、駆け出した。
「なっ——速い!?」
帝国機のパイロットが、驚愕の声を上げた。
試作機は、帝国機の三倍の速度で接近していた。
「避けろ!」
先頭の帝国機が、回避しようとした。だが——遅い。
正義は、剣を振り抜いた。
ズガァン!
帝国機の右腕が、切り飛ばされた。
「ぐあっ!」
「一機!」
正義は、すぐに次の目標に向かった。
「くそ、追え!」
残りの二機が、追撃を始めた。だが——
「遅い」
正義は、狭い峠道を縦横に駆け回った。
帝国機は、その巨体ゆえに、狭い道では小回りが利かない。試作機は、その隙を突いて一撃離脱を繰り返した。
「ちょこまかと——!」
「当たれ!」
帝国機が、乱射を始めた。だが、速すぎる試作機には当たらない。
「二機目!」
正義は、背後に回り込み、帝国機の脚部を斬り裂いた。
機体が、バランスを崩して倒れる。
「残り、一機」
だが——
「やるじゃないか」
最後の帝国機が、剣を構えた。
「だが、お前の機体も限界だろう」
正義は、計器を確認した。
魔力残量——残り20%。
「……確かに」
「降伏しろ。これ以上は——」
「断る」
正義は、最後の賭けに出た。
残りの魔力を、全て速度に注ぎ込む。
「なっ——」
帝国機が、反応する前に——
正義は、懐に飛び込んでいた。
「終わりだ」
剣を、帝国機のコックピットに突き立てた。
勝利。
だが、試作機も限界だった。
「……魔力切れ」
機体が、動きを止めた。正義は、コックピットから這い出た。
そこに——
「マサヨシさん!」
リリアナが、駆け寄ってきた。
「無事ですか!?」
「ああ……なんとか」
正義は、地面に座り込んだ。
「三機、撃退した。だが……」
倒れた帝国機を見た。
「これは、偵察部隊に過ぎない。本隊は、まだ来る」
「わかっています」
リリアナは、頷いた。
「でも、今日、証明されました」
「何が」
「カルダニアでも、帝国に対抗できる、ということが」
リリアナの目には、涙が浮かんでいた。
「ありがとうございます、マサヨシさん。あなたは——」
正義は、立ち上がった。
「まだ、終わっていない」
「えっ」
「この勝利は、始まりに過ぎない。本当の戦いは、これからだ」
正義は、山の向こう——帝国の方向を見つめた。
「俺たちは、まだまだ強くなる必要がある」
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