カシマとカトリの蕃神録 陰キャの太陽神は闇夜に微笑むか

神田 るふ

第1話 蕃神録計画

 既に何度もオリンピックと万博を経験し、多種多様な外国人、民族が入り乱れるようになった、現代日本。


 国際間の交流は人間、文化、習俗のみならず、彼らが信仰する神々、畏怖する妖怪変化の類にまで及んでいた。


 人が祈る所に神が居り、人が恐れる場に怪異が潜む。


 これまで、日本は八百万の神が住まう国としてそれらの神々や神霊の類を受け入れ、受容してきた。


 しかし、この極東の島国はかつて経験したことの無い神々の大移動の直面している。


 人種と人数という、質、量共に桁外れになった外国人たちの移動と定住は、人間社会の構造のみならず、精神の世界に存在する神々の世界をも動揺させるに十分だった。


 日本全国の神社にまします神々や神霊たちからの苦情や相談事に苦慮した日本の神々の最高機関“高天原”はついに、ある決定を下す。


 高天原令第12号。


 蕃神録ばんしんろく計画である。


 この聖令せいれいの主たる目的は二つ。


 一つ目は、日本にやって来た異国の神々、すなわち“蕃神”を記録し、データ化すること。


 簡単に言うと、神々の住民登録である。


 この際、どう見ても人間に対して危害しか加えないような神に非ざる化物や怪物などは調伏、駆逐の対象となる。


 二つ目は、神として認定、登録された蕃神たちの居住を図ること。


 ルーズに言えば、日本に住みたければ地元のルールに従いなさいと、納得してもらうことである。


 その際は、をもって聖令が執行される。


 話し合いで済めばいいが、時として、否、たいていの場合、口ではなく身体がをいう場合が多い。


 高天原から下された聖令を受け、文部科学省管轄の文化庁神祇じんぎ課が対策チームを設置、蕃神録計画の実行に移ったのは、今から三年前のことである。


 それからまあ、いろいろあるにはあったが、蕃神録計画は現在も執行中であり、よりアクティブになっている。


 少々、あらましについて語りすぎて、自己紹介が遅れてしまった。


 私の名前は、思井おもいかの。


 文化庁神祇課調査班特別対策室の室長補佐にて、対策室でただ一人の、人間の係員である。

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