第3話 お悩み

「……あの、帝さま。その、ご体調が優れないのでしょうか?」 

「……ん? ああ、そういうわけじゃないんだよ。心配させてすまないね、雪近ゆきちか

「あっ、いえぼ……いえ、私のことなどどうかお気になさらず!」



 ある日のこと。

 清涼殿の一室にてそう問い掛けるも、優しく微笑み答えてくださる帝さま。ご体調が優れないと決まったわけじゃないけれど……だけど、いずれにせよ僕などよりご自身をこそお労りしてほしい。


 ところで、僕が気にかかったのは帝さまが憂いた表情をなさっていたから。……そして、体調の不具合でないとすれば、その理由は――



「……やはり、例のことでしょうか。一向にお世継ぎが生まれないという、例の悩ましき事態について」


 そう、逡巡しつつ尋ねてみる。帝さまにはそのお立場上、数多のお后さまがいらっしゃるのだけど……その中の何方どなたとも、ただの一人として御子を授かっていないとのことで。薬師さまにも治せず、僧侶さまが祈祷をしてもまるで効果がないとのこと。理由は未だ皆目不明だけれど、それでも一つだけ言えることは……その由々しき事態の原因が、帝さまの方にあるということで。



 もちろん、帝さまを非難する意図はまるでない。そもそも、この状況に最も苦しんでいるのはきっと他ならぬ帝さまで。

 ……ただ、后さまの方に原因があると考えるのは流石に説明がつかなくて。と言うのも、前述の通り帝さまには数多の后さまがいるので、もしもある特定の后さまに原因があったとしても、他の后さまとの間ならいつかは御子を授かるはずだから。なので、后さまの方に原因があるとしたら、それは即ち全ての后さまが原因ということになるのだろうけど……うん、流石に現実味がなさすぎる。なので、この上もない恩人に対しいたく心は痛むけれど、帝さまの方に原因があると考える他なくて。



「……本当に、困ったものだね。もしかすると、前世の因縁なのかな」

「……っ!! そんなことはありません! 帝さまは前世でも必ずや聖人のような御方で――」

「ふふっ、それは過大評価というものだよ。だけど、ありがとう雪近。君がそう言ってくれると本当に救われるよ」

「……帝さま」


 すると、お顔を曇らせ呟きになる帝さま。だけど、僕の言葉に可笑しそうに――そして、柔らかな微笑で感謝の意をお告げになり……うん、良かった。帝さまの前世が悪かったはずなんてないし、彼にはいつでも穏やかな御心であってほしいから。






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