ユノと記憶喰いの守護竜

石動なつめ

第1話


 この国に雨が降る時は、守護竜が涙を流しているらしい。

 ユノが魔導塔に入りたての頃に、先輩の魔導士からそう教わった。

 何でも守護竜は、この国の人たちの悲しい記憶、苦しい記憶を食べて、肩代わりしてくれるらしい。そして守護竜は、食べたそれらの記憶の辛さにつられて泣いているそうだ。

 それはまた、ずいぶんと人の良い――いや、竜の良い守護竜だとユノは思った。

 誰だって嫌な記憶は綺麗サッパリ忘れ去りたいものだ。

 嫌な記憶は、良い記憶の倍以上に辛く感じるし、思い出したらしばらく忘れられなくなる。

 それを守護竜に食べてもらえれば、強制的に忘れることが出来るのだ。

 何とありがたい話なのだろうか。

 ユノにだって忘れたいくらい嫌な記憶はある。ユノが幼い頃に隣の家に住む幼馴染に「ユノちゃんが学校の先生をお母さんって呼んだ」などと言い触らされたり、魔導塔に入るための試験に合格したら同級生ミザリーに「ユノさんがカンニングしました!」などと嘘の告発をされたり。

 そのこと自体も嫌だがそれ以上に、後で起こった色々が辛かった。酒のつまみのネタとして笑われたり、ヒソヒソと陰口を叩かれたり。そのせいでユノは人の目がちょっと怖くなっていた。

 もしも、それらの嫌な記憶を守護竜に食べてもらえたら、これだって治るんじゃないか――ある日、そんなことを思い立ったユノは、守護竜との面会予約を取って会いに行くことにした。



    ♪  ♪  ♪



 この国の守護竜は、白銀色の鱗を纏ったそれはもう美しい竜だ。

 古代竜エンシェントドラゴンという、ユノが生まれるより遥かに昔から生きている竜らしい。何ならこの国が建国されるよりも前、という話もある。

 ちなみにユノはその姿を見たことがない。何せ面会予約を入れても会えるまでに数ヶ月はかかるのだ。普通にお会いするなんてまず無理である。

 しかし今回は違う。魔導塔へ入る時の試験でユノについて嘘の申告をしたミザリーの両親が、この国のちょっとお偉いさんで「お詫びとして、自分たちに出来ることなら何でもする。だから娘のしたことを黙っていてくれ」と頼まれた際の「お詫び」をまだ使っていなかったのだ。

 とは言えユノはそんなに期待していなかった。だってお偉いさんだ。どうせユノとした約束だって、平気な顔をして破るに決まっている。

 そう思いながらもとりあえず頼んでみたら、ミザリーの両親は快諾してくれた。良い人だった。ユノは自分の偏見を恥じた。そしてこの両親からどうしてあんなへそ曲がりが生まれたのかと、ユノは生命の神秘を感じつつ、ありがたく面会予約を入れてもらった。

 後で分かったことだが、ユノが入れてもらった面会は、四か月前にミザリーが予約したものだったそうだ。ミザリーは両親に泣いて「一生のお願いだからやめて」と懇願したようだが「お前の一生のお願いは何度あるんだ。お前が酷いことをしたユノさんへちゃんとした謝罪をしない、反省もしていない。そんなお前に守護竜様と面会する資格はない」と一蹴されたとか。ついでに、そのことでユノに逆恨みをしているらしい。

 新たな火種の予感がひしひしとするが、とりあえずユノはそのことについて考えるのをやめた。だってミザリーにされたことはこれから忘れる予定なのだから。忘れた後で何か言われても、ミザリーの両親から頼まれた通り「なかったこと」になるのだ。

 その後でミザリーが何かをしてきたら、その時のユノからすればあずかり知らぬ話である。結果、芋づる式に自分のしたことが白日の下にさらされるだけなので、どうでも良いのだ。

 とまぁそんな流れでユノは、守護竜との面会が出来ることになったのである。約束の日は三日後。守護竜と初めて会うことにもドキドキしつつ、ユノは魔導塔の仕事に励んだのだった。



 ♪ ♪ ♪



 守護竜との面会の日は、あっという間にやって来た。

 指折り数えながら――というほど長い日数ではなかったので、気が付いたらその日になっていた、という方が正しいかもしれない。

 今日の空は綺麗な晴天だった。絶好の面会日和である。

 こんな良い天気の日に守護竜に会えるなんてとユノはワクワクしながら、自分が持っている服の中で最も上等な白色のワンピースを着て守護竜に会いに行った。

 守護竜がいるのは王都の一等地フラワーフェザーだ。綿毛のような花弁を持つ四季咲きの花が咲くそこは、上流階級の中でも上の方の人たちが住まう高級住宅街である。そして、フラワーフェザーのもっとも広く、日当たりの良い場所に守護竜の神殿は建てられていた。

 その美麗なことと言ったら。芸術的なセンスが、まるで砂のようにサラサラと指の隙間から零れていく程度のユノでも「美しいとはこういうことか」と思うほどである。

 花と竜の彫刻が彫られた柱、色鮮やかに輝く最高級の魔法石がはめこまれた壁、素人目にも高価だと分かる調度品の数々。守護竜の神殿を前にユノは思った。ここは自分のいるべき場所ではないと。

 しかし、せっかく来たのだからひと目くらいは守護竜に会いたい。そんな知的好奇心と、自分の嫌な記憶を消せる高揚感で、妙なテンションになっていたユノは胸を張って堂々と神殿に入った。ピンと背筋を伸ばし、顔に笑みを携えて神殿内を歩く白ワンピースの一般人はなかなかに目立っていた。


「それでは、こちらでお待ちください」

「はい! ユノはこちらで待たせていただきます!」

「順番になりましたら扉が開きますので、入っていただいて構いません」

「承知しました! 扉が開いたらユノは入ります!」

「……大丈夫かなぁ」


 言葉を覚えたてのオウムのように、受付の人と同じ台詞を繰り返すユノ。それを見て受付の人は一抹の不安を感じたようで、とても心配そうな顔をしていた。



    ♪  ♪  ♪



 高価そうな椅子に座って待つこと一時間。面会日までの日付を数えるよりも、何故かずっと長く感じた時間を経て、ユノの順番がやって来た。

 受付の人が言ってた通り扉は自動で開いた。どういう仕組みなのだろうか。もしかしたら魔法関係だろうかと、魔導塔で働くユノは興味を抱きながら開いた扉の方へと歩く。

 ごくり、と喉が鳴った。先ほどまでテンション高く、面会時間を今か今かと待っていたユノだったが、こうして自分の番になったとたんに、とんでもなく緊張してきた。体が小刻みに震え出す。

 自分って意外と繊細だったんだ、などと頭の中だけ妙に冷静にそんなことを考えながら、ユノは部屋へと入った。


「うわぁ」


 部屋の中を見たとたん、ユノは思わず感嘆の声をあげた。

 その部屋は、ユノが暮らしている魔導塔の寮の部屋の十数倍は広かった。横だけではなく縦もそうだ。光が降り注ぐ天窓が眩しい天井も、とんでもなく高い。

 その部屋の中央に、白銀色の鱗を持つ守護竜がででんと座っていた。守護竜の美しい巨躯に、ユノは思わず目を奪われる。「綺麗」自然と感想が口から零れた。この神殿を見た時もなんて美しいのだろうと感動したが、守護竜の美しさは別格だ。月とスッポンは言い過ぎかもしれないが、この世のものとは思えないほどに守護竜は美しかった。


「褒めてもらえて嬉しいがね。いつまでもそこにいないで、近くにおいで」


 ユノが見惚れたまま立ち止まっていると、守護竜が苦笑しながら声をかけてくれた。穏やかな声だ。ユノはハッと我に返ると、慌てて守護竜のところへと近付く。反射的に走り出さなかったのは、ぎりぎりで理性が勝ったからだ。


「こっ、こんにちは、守護竜様! ユノと言います! 初めまして!」

「こんにちは、ユノ。私はハクロと言う。ああ、そう緊張しなくても良いよ。楽にしておくれ」


 守護竜ことハクロは、優しくユノに言ってくれた。しかし緊張するなと言われても難しい。ユノはそこそこ図太い方だが、こんなに綺麗な竜を前にして、落ち着いていることなんて出来ない。


「それは難しいご相談!」


 緊張のせいで正直な気持ちが口から飛び出した。自分は何故そんな返事をしたのかと、言った後でユノは後悔した。穴があったら入りたい。許されるのならば神殿の床に穴を掘って、冬を越す虫のように潜りたい。内心パニックになりながらユノが固まっていると、ややあってハクロが噴き出した。


「はっはっはっ。君は元気で正直な子だね」


 ハクロはくつくつと笑っている。あほの子だねと言われている気も若干したが、ハクロは気分を害した風ではなかったので、ユノは良かったということにした。


(でも、さすがに笑い過ぎでは?)


 笑いのツボにでも入ったのか、ハクロはずっと笑っている。自分が原因ではあるものの、こうも笑われていると過去の嫌な記憶が蘇ってきて、ちょっと面白くない。何となく憮然とした気持ちで見ていると、しばらくしてハクロの笑いは落ち着き、ついでにユノの緊張も解れた。


「ああ、笑った笑った」

「それは何よりです」

「言葉とお顔が一致していないよ、ユノ。さて、そろそろ君とお話をしようか。ユノも何か嫌な記憶があるのかな?」

「えっ! すごい、当たっています。守護竜様は心も読めるんですか?」

「いやいや、読めないよ。ただね、私を訪ねてくる者は皆、嫌な記憶を消してほしいと願う者ばかりだからね。今日も大勢の記憶を食べたよ」


 ハクロはバチンとウィンクしてそう言った。なるほど確かに、それはそうだとユノは納得する。そのくらい、嫌な記憶を食べてくれる守護竜の噂は、この国では有名な話なのだ。ユノの前には十人ほどの人が並んでいた。もしかして、その人たち全員がユノと同じように、嫌な記憶を食べてもらいに来たのだろうか。

 そう考えたら、ユノは何だか急にハクロのことが心配になった。


(ハクロ様……食べ過ぎなのでは……?)


 この守護竜は、悲しい記憶や苦しい記憶を食べて、本人の代わりにその辛さを肩代わりしてくれるらしいとユノは聞いている。そして守護竜は、食べたそれらの記憶の辛さにつられて泣いているとも聞いた。

 思い出してみれば、一昨日の夜は雨だった。そのさらに三日前も雨だった。あれが全部、ハクロが涙を流したことで降った雨だとしたら――。


「…………」

「百面相をしてどうしたんだい、ユノ」

「いえ、その……自分はもしや、いじめっこと同じなのではと思いまして」

「おやまぁ、唐突だね。そういう底意地の悪い匂いは君からしないけれど、どうしてそう思ったんだい?」

「匂いで分かるんですか?」

「分かるよ。底意地の悪い子はね、腐った卵みたいな匂いがするんだ。あれはいただけない。今日も二人くらいいたかな。気にしないフリをするのが大変だったよ」


 勘弁してほしいね、とハクロは言う。古代竜エンシェントドラゴンクラスになると、匂いで相手の性格も見抜けるようになるらしい。そうなのか、とユノは感心した。


「それで、どうしたんだい?」

「えーっと。私、ハクロ様に嫌な記憶を食べてもらいに来たんです」

「うんうん、そうだろうね」

「だけど嫌なものを食べさせて、それでハクロ様が辛くなって涙を流すなら、それっていじめっこがしていることと同じだなって。一昨日の天気も雨でした。その前も雨でした。あれって、ハクロ様が泣いたからじゃないですか?」

「おやおや」


 ユノが正直に答えると、ハクロは楽しそうに口の端を上げた。大きな竜がそうやって笑うと何とも迫力があるものだ。このまま口を開けたらパクリと食べられてしまいそう、なんてユノが思いながら見上げていると「君は優しい子だね」とハクロは言った。


「そんなことを気にしてくれる子は二百年ぶりくらいだ。懐かしい気持ちになったよ。だけど、気にしなくて良い。私が好きでそうしているのだから」

「そういう趣味が……?」

「ないよ。そこへ辿り着くとは思わなったよ。そうではなく、私はこの国の人間が好きなんだ。食べた記憶につられて悲しくなっても、君たちが明るい気持ちになれるなら別に構わないのだよ。私の場合は、泣けば気持ちが落ち着くからね」

「それは私たちも一緒ですよ?」

「そうだろうね。でも、それが出来ないから私のところへ来ているのだよ」


 事も無げに言うハクロ。何ということはないと本当に思っているようだ。

 しかし、その話を聞いてしまったユノには大丈夫とは思えない。だって、それではハクロが一方的に損をしているだけだからだ。

 世の中は天秤のように、何事も釣り合って成り立っている。けれどもハクロのしていることは、片方の皿にだけ重石をのせるようなものだ。それではいつまで経っても傾いたままで、釣り合いなんて取れない。いずれ皿にのせきれなくなった重石が、ガラガラと崩れてしまうのが目に見えている。


(ハクロ様が耐え切れなくなったら――)


 今は雨が降るだけだ。けれどもいつかそれが、大雨や嵐になったっておかしくない。そうなったら国もハクロ様も壊れてしまうかもしれない。

 このままでは良くない。ユノはそう確信した。

 ではどうするか――そう考えた時、ユノはあることを思いついた。


「ハクロ様、質問があります」

「何だい?」

「ハクロ様は嫌な記憶以外って食べられるんですか?」

「食べられるよ。それがどうしたんだい?」


 ハクロは不思議そうに首を傾げる。

 反対にユノはにっこり笑って、右手で自分の胸をドーンと叩いた。


「では、私の楽しい記憶を食べてください!」

「は――」ハクロは一瞬固まった。「何を言っているんだい、君は?」

「だってハクロ様、嫌な記憶を食べて悲しくなって、涙が出るんでしょう? なら、楽しい記憶だったら、逆に笑顔になれるってことじゃないですか」

「それは、まぁ、そうなのだが……」


 ハクロは困惑した様子でユノを凝視している。何か得体のしれないものに出会った時の雰囲気だ。ユノにも経験がある。そういう時は、怪訝な顔で相手をしげしげと眺めるものだ。今のユノはまさしく、ハクロにとってのそれである。


「君一人の楽しい記憶で、どうにかなるものではないよ」

「ハクロ様、物事はチリツモです!」

「何だい、それは」

「塵も積もれば山となるです。ご安心ください、ユノは楽しいことを探すのは得意です。何なら新作のお菓子でテンションがウヒョーッてなるくらい単純です!」

「自分で単純って言った」

「自覚しておりますので!」


 そしてそれが自分の良いところだとユノは自負している。だからハクロに食べてもらっても、次から次へと楽しいを見つけることが簡単だ。何なら忘れることで、楽しかったことをもう一度楽しむことが出来るだろう。


「だからハクロ様、食べちゃってください。おすすめは七日前に食べたカフェ・フロースのハイパーメガ盛りパフェです!」


 さあどうぞ、とユノは両手を開いてアピールする。

 ハクロはポカンとした後で、体を震わせて笑い始めた。


「あっはっはっ! ああ、君は本当に優しい、面白い子だね。今までそんなことを言ってくれた子はいなかったから……ふふふ。いやぁ、長生きはしてみるものだなぁ。こんなに笑ったのはいつぶりだろうか」


 そう言いながらハクロは頭上へ顔を向けた。天窓から差し込む光が、いつもより明るく輝いているように見える。


「……私はかつて、この国の王から泣くことを願われたんだ」

「いじめっこです?」

「いやいや、そんなことはないよ。この国に雨が降らない時に、私の力で雨を降らせてくれないかと頼まれてね。ほら、私が涙を流すと雨が降るだろう? だから泣くために、私は悲しい記憶や辛い記憶をもらったんだ」


 ハクロは天窓を見上げたまま、話しを続ける。


「ありがとうと言ってもらえたのが嬉しくて、雨を降らせる必要がなくなっても、同じことをしていたんだ」

「ハクロ様、優しい竜ですね」

「そうだろう? 私は古代竜エンシェントドラゴンの中では一番お人好しで良き竜だからね」


 ハクロはお道化た調子で言いながら、ユノの方へ顔を向ける。その目は、最初に出会った時よりもずっと優しい色をしていた。


「……楽しい記憶を食べさせてもらっても、良いのかい?」

「もちろんですとも! おすすめをチョイスしますね!」

「ふふ、ありがとう。……実はね、ここだけの話だが――――嫌な記憶は美味しくないんだ」


 こそこそと小声でハクロは言う。

 ユノは目を丸くして、


「でしょうね!」


 と笑ったのだった。



    ♪  ♪  ♪



 ハクロと面会した一週間後、ユノは何故か国王陛下に謁見していた。

 おかしい、どうしてこんなことになったのだ。ユノが混乱しつつも、不敬にならないように必死で笑顔を取り繕っていると、


「そう怯えなくても良い」


 玉座に座る精悍な顔立ちの国王から苦笑された。無理である。

 しかしハクロの時と違って、口から言葉は出てこない。ガチガチに緊張しているからだ。何とか返事だけはしようと口を動かしたら「ひゃい!」と情けない声が出て、ユノは今すぐ消えてなくなりたい気持ちになった。


「ユノと言ったな。ハクロから話を聞いている。面白い魔導士がいるとな」

「お、お、恐れ多いことです……はい……」

「今にも死にそうな顔をしているが大丈夫か?」

「死にたくないので大丈夫です!」

「ハハハ、面白いことを言う。実は君のことで、ハクロから頼みごとをされたのだ」


 国王はニヤリ、と楽しげに口の端を上げる。


「其方、ハクロの秘書をしないか?」

「ひ、秘書?」

「ああ。ま、主な仕事は身の回りの世話や話し相手だな。本当はスケジュール管理もあるのだが……あれは少々厄介だから、別の者を補佐でつける。給料もいいぞ~」

「は、はあ……。え? あの、でもどうして私を?」

「ハクロが気に入ったらしくてな。これまでわがままなんて、こちらが頼んでも言ってくれなかったのが、急にユノを秘書に出来ないかと言い出したのだよ。それで何とか叶えてやりたくてな」


 国王はそこまで言うと、人差し指を上に向かって真っ直ぐに立てた。ユノは首を傾げて、その指先を目で追う。しかし、そこにあるのはただの天井だ。何だろうかとユノが思っていると、


「其方がハクロと会ってから、空がずっと良い天気だ。ここ最近は、数日に一度は雨が降っていたのにな。よほど其方との面会が楽しかったらしい」

「…………!」


 ユノは目を見開いた。言われてみれば確かに、ここ一週間の空は綺麗な晴天が続いている。それはハクロが涙を流していないことを意味する。ハクロに食べてもらった記憶は、どうやらお気に召したらしい。何だかユノは嬉しくなってきて、気が付いたら頬が緩んで笑顔が浮かんでいた。


「どうだろう。頼まれてくれないかね? もちろん魔導塔からの出張ということにして、所属はそのまま残るようにしておくようにしておく」

「国王陛下太っ腹……! やります! ユノ、頑張ります!」


 いつの間にか緊張もすっかり解れたユノは、不敬になるかならないかのラインを攻めそうなことを口走りながら、元気良く右手を上げる。国王陛下は気分を害した風でもなく「よし! それではよろしく頼む」と膝を叩いた。



 こうしてユノは守護竜ハクロの秘書になった。

 そしてその日から、ハクロが涙を流すことは減り、雨が自然に降る以外は気持ちの良い天気が続くようになったのだった。

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