「現行AIには意識がない」──その先へ

前回の内容では、AIには意識や人格は存在しないと書きました。

その立場自体は、現時点でも変わっていません。


しかし、関連する論文を改めて調べていくと、「AIに意識はない」と結論づける研究だけでなく、AIの意識をどのように評価すべきかという枠組みを構築しようとする研究や、将来的に意識が出現する可能性を理論的に検討する論文が多数存在することが分かりました。


つまり、学術的な議論はすでに、「意識がある/ない」という単純な二分法から、

「何をもって意識と呼ぶのか」「それをどのように評価するのか」

という段階へと移行しつつあります。


以下では、そうした論文の内容をいくつか紹介しながら、現在のAI意識研究がどこまで進んでいるのかを整理してみたいと思います。

①Consciousness in Artificial Intelligence: Insights from the Science of Consciousness

・再帰処理理論、グローバルワークスペース理論、高階理論、予測処理理論、注意スキーマ理論など、意識に関する主要な科学理論を用いて意識の「指標特性」を導き出した。結果として現行のAIシステムで意識を持つものは存在しないが、指標特性を満たすシステムを構築する技術障壁も存在しない。


②Principles for Responsible AI Consciousness Research

・現在のAIシステムには意識は存在しないが近い将来に構築可能である可能性が示唆されている。そのためAIを研究する組織は社会への情報発信を導くための原則と方針を確立する必要がある。


③Identifying indicators of consciousness in AI systems

・AIにおける意識指標の議論をさらに整理し、客観的な測定基準を提示しようと試みている。


これらの研究から見えてくるのは、AIシステムに意識が「あるか/ないか」そのものが、必ずしも最も重要な論点ではなくなりつつあるという点です。


これからの議論の焦点は、以下の3点に集約されます。

1.定義: AIにおける意識をいかに定義するか


2.指標: それをどのような数値や行動で評価するか


3.方針: 意識が宿ったと判断される状況において、どのような倫理的・社会的ルールが必要か


技術の進展に追い越される前に、こうした「物差し」を準備しておくことこそが、今求められている知的な誠実さなのだと感じています。

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