"gently e grave al fine"

@K_3a

gently e grave al fine

「この国では、市民は発言権を金で買う。代金は通貨である金貨1枚につき10文字、同じ重さの銀貨では5文字だ。私は億万長者だった。しかし、もう先が長くないようなので有り金を全て使い切ることにした。全部を使い切るのなんて無理だと思っていたが、旅行先では美食、夜はバーで飲酒という生活を続けていたらあっという間に金が減っていった。それでも、私の手元にはある程度の金が残った。が、残りの人生はできるだけ会話を多くして平凡に暮らすことにした。

金は生まれた時からあった。親が財閥のトップだったからだ。親が死に、唯一の子だった私は当然のように財閥を引き継いだので、人生で金に困ったことは一度も無い。やがて私も歳を取り、財閥は息子に託した。それから今に至る。

私は死期を悟った。だから私が生きた証拠を残そうと思い、この声をカセットに録音している。金は金貨が41枚、銀貨が23枚だ。話し切っても余ることだろう。私は今日死ぬはずだ。なので、最期にこれだけを録音する。


良い人生だった。あり」


そこで、老人の言葉は止まった。どうやら、銀貨を3枚数え間違えていたらしい。少しの間があった後に、カセットの録音は止められた。その日に家で死んでいた老人は、悔いに満ちたような顔をしていた。

皮肉なことに、彼が生まれて初めて金に困ったのは、その命の最期であった。


"gently e grave al fine" fine.

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