緑髪の採掘者と赤髪の青年

@IZUMIN21

緑髪の採掘者と赤髪の青年

勇気の国Braveは産業が盛んな国だ。すべてはジルコン鉱山のおかげと言っても過言ではない。豊富で良質なジルコンが採れるという噂は他国にも広がり、多くの専門採掘者――『ジルコマイナー』たちが集まってくる。


エメラルドグリーンの髪を高く結い上げ、 同色の瞳が印象的な彼女もその一人。Peacefulからやってきた異国の採掘者だ。


今日も彼女は誰よりも早く目を覚まし、鉱山へ向かった。朝露に濡れた道を急ぎ、坑道の奥深くへ潜る。一心不乱にピッケルを振り、ジルコンの欠片を探す。彼女の手はすでに固く、指先には古い傷が刻まれていた。


だが今日は、いつもと違っていた。ジルコン鉱山は他の鉱山とは異なり、天候が不安定だ。ジルコンが「熱と光を生み出す」特別な鉱石だから、という言い伝えがある。突然、空が暗くなった。


外で大雨が叩きつける音が聞こえる。他の採掘者たちは慌てて退出しただろう。

だが彼女は奥に入り込みすぎ、外の様子など知る由もなかった。


ガラガラガラガラ……!


巨大な振動が坑道を襲い、後方の通路が一瞬で崩れ落ちた。土埃が舞い上がり、彼女の視界を覆う。咳き込みながら駆け寄り、崩れた岩壁を拳で叩く。ピッケルを振り下ろすが、岩はびくともしない。何度も、何度も繰り返すが、状況は好転しない。


息を切らし、彼女は膝をついた。諦めて座り込み、周囲を見回す。暗闇の中で、壁から顔を覗かせるジルコンの欠片が、かすかに青白く輝いていた。その光が、わずかな希望のように感じられた。……どれほどの時が経っただろう。喉は渇き、身体は重い。彼女は壁に寄りかかり、目を閉じた。


「もう、だめかも……。いつか、私が採った最高のジルコンで作ったギアを、英雄に贈りたかった。あの大災の竜を倒してもらうのが、私の夢だったのに……」


涙が頰を伝う。力なく呟いたその時――。


「おおーーい! まだ生きてるかー!? 生きてんなら、壁から離れろ! 今助けてやるからな!」


壁の向こうから、野太い声が響いた。どこかで聞いたような……。幻聴かと思ったが、同時に周囲のジルコンが強く輝き始めた。その光が彼女の身体に温かな力を注ぎ込む。よろよろと立ち上がり、彼女は反対側の壁まで後ずさる。背中を預け、腰を落とした。

力の限り、声を絞り出す。


「離れたよーーー!」


ジルコンがさらに激しく輝く。


「オッケー! それじゃあ……ブチかませぇ!! 俺のジルパワァァアアア!!」


ゴォォオオオーン!!


爆発のような轟音。岩壁が砕け散り、埃の中から現れたのは――赤い髪を風になびかせ、緋色の瞳を輝かせる青年。


肩に巨大な金色のハンマー型ジルコンギアを担ぎ、豪快に笑っていた。手は血まみれで、服はズタズタ。無数の傷が、彼の苦闘を物語っている。


彼は片手を差し伸べ、歯を見せて笑った。


「ッヨ! やっぱりあの時のアンタか! Braveに久々に帰ってきたらよ、昔アンタがのど飴くれた酒場でビール飲んでたらさ、『緑髪のあの娘、大雨の日から見かけねえな』って聞いたんだ。まさかと思って来てみたら……よかったぜ、無事で!」


彼女は目を丸くした。あの時、喉を枯らした見知らぬ青年に、ただのど飴を渡しただけなのに。


「まさか……あの時のことだけで、探しに来てくれたの?」


青年は照れくさそうに頭を掻き、血のついた手で彼女の腕を優しく掴んだ。


「ん? ああ、まあな。あの時、マジで助かったんだよ。そんなことより、早く出ようぜ! それからまた、うまいビール一緒に飲もうや! なっ!」


彼は彼女を抱きかかえるように支え、崩れた坑道を戻った。道中、彼のハンマーが輝くたび、怪物たちが怯えて逃げていったという。


―――後日、彼女は自ら採掘した特別なジルコンで、エメラルドグリーンに輝くハンマーを彼に贈った。そして赤髪の青年は、それを手に大災の竜に挑んだそうだ。

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