竜神と巫女 ~英雄の娘として生まれた私、最強の竜使いとして戦場を駆け抜けます。

神保2才

序章 戦火の中 

序章

焼き尽くされるように真っ赤に染まった空に、無情な光景が流れる。


私はもう何物にも動じない強い女になったと思っていた。だが、一瞬、ほんの一瞬だけ気が緩んだ瞬間。私の大切なものは傷つけられた。


私は相手が語る言葉に飲み込まれ、我を失っていた。その代償が、目の前の光景だ。


臨青(りんせい)の空のように澄んだ青い鱗が深紅に染まり、優美な羽は折れていた。首が繋がっているのが不思議なほど深い裂傷を負わされている。人を乗せるための蔵と鐙は見当たらない。


いかに再生力が強い竜族とはいえ、これは致命傷なんだと理解できる。


「私を置いていかないでよ、臨青(りんせい)。どんな時も、死ぬときも二人一緒って言ったのに」


荒れ果てた石畳に落ちていく私たち。


どれだけ必死に呼び掛けても、私を優しく見つめてくれた竜の瞳は閉じられたまま。

竜にしては珍しい、機嫌に応じて動く尻尾が、私の言葉にも反応しない。そのことが命の期限が迫っていると伝えてくる。


「戦争が終わったら一緒に世界を旅するって約束したじゃない。なのに、なのに私を一人にしないでよ」


必死で泣き叫んでも、臨青は応えてくれない。


私たちを落とした相手は、こちらを嘲るように見つめてくる。私の部下たちが時間を稼いでくれるが、それもどこまでもつか。


私は、臨青を出来るだけ優しく着地させる。砲弾の音が響き、どこかで強く魔素が練られる気配がしている。嫌に他の情報が入ってくる。


私は、臨青の冷たくなっていく体に触れる。私は選択を迫られている。自分の罪を贖うのか、大切な物のために罪を重ねるのか。


激しさを増す戦場は、最後のクライマックスを迎えていた。

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