中央町に関する記述の断片

肥後妙子

第1話 始まりは牡牛座

 私には特技がある。どんなに雑に書かれた走り書きも解読し、読みやすく清書できるのだ。これはそんな特技の思い出。昔のメモが出てきた。正確にはメモのメモだけど。


 中央町の手袋のなる木をめぐって。

 手袋のなる木の特徴、初冬の真昼、街角の街路樹のうちの一本がそれである場合に気づく場合が殆ど。るのは五本指の手袋ばかり、ミトンが生ることは無い。色は茶褐色である場合が多い。路上で手袋のみ見つかる場合もある。手袋だと思い、拾おうとするとスズカケの木の落ち葉に変わる。

 枝から直接、手袋をとる行為を『握手』と言う。


 この話はいつのころからか中央町の牡牛座生まれの少女達の間に広まっていた。指の怪我を治すときは『握手』で採ってきた手袋をはめるとよいとの話も牡牛座の少女達の間に知られていたが、やがて彼女たちから全星座の少女たちに広まった。


 治癒者について。

 手袋のなる木の手袋を使って指の怪我を治す少女。一世紀前の牡牛座の少女達が祖と言われているが、現在は星座を問わない。彼女たちが現れるのは指を怪我したものが患部に冷たい息を吹きかける時とのこと。必ず日没後のことだという。非科学的な存在ゆえ、怖がられることも多い。しかし、我々は彼女たちを否定するすべを持たない。


 こんな風に謎めいた走り書きのメモを、十年以上前に解読して清書したことがあった。空想か何かなんだろうけど、懐かしい。


                         一章?おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

中央町に関する記述の断片 肥後妙子 @higotaeko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画