友人A
夜汐 しおり
友人A
菜々子ちゃんと連絡を取らなくなってから、もう1年が経つ。
菜々子ちゃんとの出会いは社会人になってからだ。
私たちには共通の趣味があって、その趣味のイベント会場で出会った。
共通の趣味の話をしているおかげもあって、かなりのスピードで仲が深まったと思う。
毎日連絡を取り合って、たまに電話して、お互いの秘密を共有したりもした。
私だけに送ってくれる写真も、電話の時に聞こえてくる眠そうな声も、全部全部かわいいの。
菜々子ちゃんが私の日常に存在するようになってから、ほかの友達に対する「好き」とは明らかに違う種類の好きであることを自覚したのにも時間はかからなかった。
菜々子ちゃんが笑うと、心臓をきゅっと掴まれてるみたいに痛くなるけど、それが心地良い。
私のこれからの時間をあげるから、菜々子ちゃんの時間も私にちょうだい。
そんな独占欲じみたことを思ってしまうほど、菜々子ちゃんが欲しかった。
旅行をした時、一度だけ菜々子ちゃんから手を繋がれたことがある。私に好きだと言ってくれた日もあった。私はそのまま抱きしめてキスしちゃいたかった。
きっと菜々子ちゃんは、私の「好き」の意味を分かっていたと思う。
分かった上で、まるで私が菜々子ちゃんにとっての特別であるかのように接してくれていたのだ。
だけど「彼女」にはしてくれなかった。
一度だけ、泣きながら私たちの関係は何?と聞いてしまったことがある。その時も菜々子ちゃんは、「大切」とか「好き」とかは言ってくれたけど、そこで終わり。私たちは名前の付いていない友達以上の関係だった。
両思いみたいなのに、付き合っていない曖昧な関係が辛くなって、連絡をなんとなく終わらせて、そのまま会わなくなった。
会わなくなってから1年。
もう自分の気持ちに整理がついたはず。そう思って久しぶり!なんてのんきに連絡しようと菜々子ちゃんの連絡先の画面を開いたら、アイコンに使われていた私との写真が変わっていた。
写真の中の菜々子ちゃんの左手の薬指には、指輪が輝いていた。
それを見た瞬間、胸の辺りを抉られたような感覚になったけど、すぐに冷静になった自分がいた。
私を正式に恋人にしてくれない理由が分かってしまった瞬間だった。
菜々子ちゃん、なんて残酷で優しいの。
これからもあなたの友人のうちの1人「友人A」でいるね。
祝福の言葉は送らず、連絡先を削除した。
さようなら。私の最愛、友人A
友人A 夜汐 しおり @yaseki903
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