蒼鍵の継承者ー影に呑まれた世界で、俺達は光を探すー

@tantan284

『蒼鍵の継承者 ― 蒼光の呼び声』

二つの月が夜空に浮かぶ世界――アルセリア。

 その片隅の小さな村、グレイヴで暮らす少年レオンは、幼い頃から同じ夢を見続けていた。


 蒼い光に満ちた広間。

 中央には巨大な扉がそびえ立ち、その前に銀髪の少女が佇んでいる。

 少女は顔を伏せたまま、かすかな声で囁く。


「――鍵を継ぐ者よ、目覚めて」


 夢はいつもそこで途切れる。


 レオンは鍛冶屋の息子で、魔法の才能も剣の腕も平凡だった。

 村の誰もが「普通の少年」と呼ぶような存在。

 だが十五歳の誕生日の夜、夢は現実へと侵食し始める。


 家の裏にある古井戸から、蒼い光が漏れていた。

 まるで夢の中の光が現実に滲み出したように。


「……なんだ、これ」


 胸騒ぎに突き動かされるように、レオンは井戸の縁に手をかけた。

 その瞬間、光が爆ぜ、彼の身体は吸い込まれるように落下した。


 落ちる感覚は一瞬だった。

 気づけば、そこは巨大な地下神殿だった。


 壁一面に古代文字が刻まれ、天井からは蒼い光が降り注いでいる。

 そして中央には――夢で見た“蒼い扉”が静かに佇んでいた。


「やっと来たのね」


 背後から声がした。

 振り返ると、夢に出てきた銀髪の少女が立っていた。

 透き通るような蒼い瞳。

 人間離れした気配をまとっている。


「ぼ、僕を知ってるのか」

「ええ。私は“門の守護者”ルミエ。あなたをずっと待っていたわ」


 ルミエは扉に手を触れながら続ける。


「この扉の向こうには、世界を滅ぼす“虚無竜ヴォイド”が封じられている。

 封印は弱まりつつあり、継承者が必要なの。

 あなたが、その鍵を継ぐ者」


「僕が……? ただの鍛冶屋の息子だぞ」


「血筋なんて関係ない。選ばれたのは“心”よ」


 ルミエはレオンの胸に手を当てた。

 その瞬間、蒼い光が彼の体を包み、胸の奥に熱が宿る。


「これは……?」

「“蒼鍵(そうけん)”よ。封印を維持する力。

 でも、継承しただけでは足りない。

 あなた自身が、この力を“選び取る”必要がある」


 扉が低く唸り、ひび割れが走る。

 中から黒い霧が漏れ出し、神殿の空気が一気に冷えた。


「時間がないわ。レオン、あなたの答えを聞かせて」


 レオンは震える手を握りしめた。

 自分には力も才能もない。

 だが、村の人々の笑顔が脳裏に浮かぶ。

 家族、友達、そして自分が守りたい日常。


「……僕がやる。

 僕が、この世界を守る!」


 その瞬間、蒼鍵が強く輝き、扉のひびが逆に閉じていく。

 黒い霧は押し戻され、神殿に静寂が戻った。


 ルミエは微笑む。


「よく言ったわ、レオン。

 でもこれは始まりにすぎない。

 封印を完全に修復するには、世界中に散らばる“七つの鍵片”を集めなければならない」


「七つ……?」


「ええ。あなたと私で旅をするの。

 この世界を救うために」


 レオンは深く息を吸い、頷いた。

 恐怖はまだある。

 だが、それ以上に胸の奥で燃えるものがあった。


「行こう、ルミエ。僕は……僕の力で、この世界を守りたい」


 二つの月が照らす神殿の出口へ向かって、

 少年と守護者は歩き出した。


 ――こうして、レオンの冒険は幕を開けた。

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