社会の荒波に疲れて、ふと途中下車した駅。 名も知らなかった町にはなんと冒険者ギルドがあった! きっと、町おこしなのだろう。 何もない土地を差別化すべく、はめ込まれたファンタジーの世界観。 鍛冶屋やスキル、コインなど。 微笑ましい工夫を凝らした演出には、読む人もフッと口元の力を緩めるだろう。 とはいえ、そこでの生活は本物。 地に足をつけ、勝ち取り、語らう中で、明るみになるものとは―――― こんな町、本当にあったら立ち寄ってみたいものですね。
仕事に疲れ、笑うことを忘れた主人公が、町の遊び心や「挑戦する者は皆勇者」というセリフに、救われていく姿に惹かれました。現実とファンタジーの境界を曖昧にすることで、生きる勇気を差し出してくれるような短編でした。
「ガタンゴトン」という音、山桜や雪解け水のきらめきといった自然描写が、主人公の疲弊した内面と対照的で、読む側をゆっくり物語世界に引き込みます。急がず、呼吸を整えるようなリズムが、立ち止まること休むこととよく噛み合っています。癒しと再生、そして現実逃避ではなく現実回復としてのファンタジーが丁寧に描かれていて、続きを自然に読みたくなる導入。この先、冒険者ギルドがどのように主人公の心と現実を変えていくのか、とても楽しみになる作品でした。