火薬の輪廻

憑弥山イタク

火薬の輪廻

 雑踏が酷く煩くて 喉の乾きを誤魔化した

 行き先も見えぬ道を逸れ 人の歩まぬ茨道

 怖がる私を嗤うなら 痛がる私を嗤うなら

 混ざる心に砂糖を零し 穢れた黒に喰われてしまえ


 鎮座せし苦痛

 傲慢なる胎動

 死を望む異人

 幸福たる偶像


 艶かしい背骨を撫で 舐めずる舌を躊躇えば

 重ねた罪を身に刻み の無い惰眠を飲み干して


 壊れた虚空に針を刺し 夜空を繕う星々と

 流れる月の笑顔とは 嘆く昨日をあざけてばかり

 孤独に縋り明日を乞う そんな私が憎たらしくて

 鏡の破片に血を垂らし 今日とて恐れてばかりです


 他人ひとを見て妬む ありふれた朝の風景

 崩れた日常に悦び 静かに嘲笑う

 凡ゆる他人ひとの上に立ち 死骸の群れを踏みつける

 靴底に溜まる血が固まり 乾いた瞳で空望む


 さよならを云う暇も無く 貴方は逝ってしまった

 鉄の降る雲の上は あんなにも寒いのに

 無臭の毒に犯されて 抜けた髪に命を見る

 迫る希望を喜べず 死骸に寄り添い朽ち果てる


 無価値の象徴

 死に際の焦燥

 曼荼羅の証明

 人格者の傷嘆


 涙を流す暇も無く 茨道を独り歩む

 猖獗の波に揺られ 吐き気を催した

 血の滲む爪を 流石に眺めた

 飽き足らず空は 鉄の雨を墜とす


 最期の瞬間私は どんな姿になるのでしょう

 考えて恐れて 震えて嗤って

 大地を穢した罰とでも云うのでしょうか

 ならば 死ぬのは私だけじゃない


 最期の瞬間私は どんな顔を見せるのでしょう

 醜怪な肉塊 顔にさえ非ず

 海を穢した罰とでも云うのでしょうか

 ならば 死ぬのは此の世の総て


 壊れゆく世界を 隙間から眺めた

 これが小説であったのならば

 奇跡を祈りましょう


 訪れる事のない

 奇跡を願いましょう

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火薬の輪廻 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama

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