雪の降らない街

古間木紺

雪の降らない街

 年末年始は彼氏の達海と過ごせないので、惣一郎は幼馴染を家に呼んでいた。彼も恋人と年越しを過ごせないらしく、ひとりもの同士一緒に集まることにした。ただ、それでもひとりの時間はやってくる。例えば幼馴染の入浴時間とか。惣一郎は電話をかけた。

「雪すごい?」

「うん。着いたらすぐに雪かきに駆り出された」

 通話中の画面がビデオ画面になる。画面の向こうにいる達海がビデオ通話に変えてくれた。彼は年末年始を実家で過ごすために帰省している。天気予報で中継されるくらいの豪雪地帯出身なので大雪には慣れているそうだが、今回は段違いだったという。

「惣一郎見える? 昨日すげぇ降ったみたいでさ」

「わ、ほんとだ。タッツミー疲れたでしょ」

「全然」

「さすがだね、タッツミー」

 目を細めると、画面越しで目が合った。照れたように目線を逸らしていて、ちょっとよそ行きの達海だと思った。

 いや、これが達海なのだろう。言い換えれば実家の達海。恋人としての達海じゃない達海を見れるのは、帰省先からの電話だけだった。年越しの瞬間は電話をすることにしているし、そうでなくても毎晩電話をしてくれる。そういうところは本当にかわいい。

「そっちはどう?」

「んー、当ててみて!」

 はぁ? 呆れた声が聞こえる。予定は知ってるけど、俺が聞きたいのはそれじゃねぇの。達海がボヤくが、それは気にしないでおく。

 リビングにはお互いの予定が書かれたカレンダーが貼られている。30日から3日まで達海は帰省。2日に惣一郎の幼馴染が遊びに来る。それはスマホアプリにも入れているので、達海が忘れることはない。

「あのねタッツミー。俺には雪に囲まれてエモーショナルな雰囲気もないし、幼馴染は絶賛バスタイムなの」

 寂しさは言外で滲ませておく。達海が家族や親戚の子どもを大切にしているのはよく知っているし、そうすべきだと分かっている。だから帰省に行く達海に文句は言わない。けれど。それはそれとして。達海とお正月を過ごせないのは寂しかった。

「――俺だって、惣一郎と帰りたい」

「……タッツミー」

「そうなるまで、ちょっとだけ待ってろよ」

 ふっと微笑まれる。達海は将来のために外堀を埋めてくれている。どうして気づかなかったのだろう。

「かっこいいね、タッツミー」

「そりゃな」

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