天の気まぐれ
神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)
第1話
五つのお祝いに、魔法使いの叔父さんからいただいた赤地に白い水玉のポーチ。ぽってりとしたシルエットで、金色のがま口。私のお気に入りで、いつも茶の革紐を肩からななめにかけていた。
叔父さんは、言った。ただのポーチをあげても、つまらないからね。魔法をかけておいたよ。どんな魔法か、当ててごらん。
次の日の朝、マントのフードを被った叔父さんは旅に出てしまった。まだお日さまがのぼっていなくて、外の冷たさに私は身震いした。
そうだ。今日の記念に。手を伸ばす。小さな手をぎゅっと握る。
やった。成功だ。手を開くと、未明の色したすみれの花が転がっていた。
ごはんだよ。家の中から、母が呼ぶ。はあい。私は、すみれをポーチの中に入れた。
ごはんが済んだら、お花の水やりだ。母が雨水を貯めた大きな木の樽から、ジョウロに水を移す。小鳥のためにも、小さな器に水を張ってあげる。
雨水は、甘いのよ。だから、小鳥がやってくるの。母は笑った。水面を覗き込む。人差し指でつくと、ぽちゃんと跳ねた。
まあるくなあれ。まんまるな水は、空中にとどまったまま。しゃぼん玉みたいだけど、消えたりしない。
指先で摘まむと、ぷにぷにした。うん、いいでき。ポーチにしまい、お花に水をあげる。
そうやって、日々のきらめきを集めていった。
叔父さんのお仕事は、世界を作ることでした。
粘土をこねて、
それでも、あなたたちは新しい人生を味わうことになるんだよ。
魂作りは、もはや失われた技術だったのです。だから、誰一人として、輪廻転生の輪から抜けることは許されない。
救済のために、この魔法使いは新しい世界を作ることを命じられたのです。
魔法使いがパンと手を叩くと、空間が生まれました。その中に、人形を入れていきます。
ところで、この魔法使いは、仕事の最中に急死してしまいました。そういう訳で、長い間、上司のところへも兄夫婦のところへも顔を見せませんでした。
そういう訳で、ついに女の子はポーチの秘密を知ることができなかったのです。
ポーチの秘密とは、空間魔法でした。ところが、少女は叔父に似て、魔法の才能があったのです。世界のきらめきを集めては、ただポーチに詰め込んでいきました。ほんの数回、何かを取り出したことがあるだけでした。
この世界の人々にとって、天気とは天から降ってくるものでした。
まず始めに、未明の色したすみれが降ってきました。そうして、彼らは息をすることを思い出したのです。
次に、ふよふよとした水の球が降ってきました。そうして、しばらくは楽しく過ごしていたのです。
ある日、鳥の羽が降ってきました。それは、死の病でした。彼らはもう二度と生まれ変わることはありませんでした。
天の気まぐれ 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho
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