第17話 あとがき

この連作を書いている著者は、

現在、うつ病で約1年半の休職中だ。


働けなくなり、

予定が消え、

社会との距離が一気に広がった。


その時間は、

決して前向きなものばかりではなかった。

焦りもあったし、

「この先どうなるんだろう」という不安もあった。


でも同時に、

立ち止まらなければ

考えなかったことも、確かにあった。



この連作でやりたかったのは、

AI時代の未来予測でも、

哲学の解説でもない。


うつ病という、

「社会の速度から強制的に降ろされた状態」で、


AI・哲学・科学を

一つの線として

自分なりに理解したかった。


それだけだ。



AIは怖いものとして語られがちだ。

奪うもの、壊すもの、

人間を無価値にするもの。


でも休職して、

生産性を完全に失った状態で

AIを眺めると、

違う風景が見えてきた。


「頑張らなくても壊れない世界」

という可能性だ。



哲学は、

そんなときに戻ってきた。


エピクロスの

「苦痛を減らす」という発想。

スピノザの

「必然を理解することが自由だ」という考え。

決定論がくれる、

奇妙な安心感。


これらは全部、

「元気なとき」には

ちゃんと読めなかった思想だ。



この連作を書く上で、

強く影響を受けた作品がある。


一つは、

チ。—地球の運動について—。


世界の構造を理解しようとすることが、

時代によっては

命がけになるという話。


それでも

「それを知りたい」という衝動を

手放さなかった人たちの物語は、

この連作の根っこにある。



もう一つは、

山口一郎の言葉や表現だ。


合理と感情、

理性と衝動、

希望と諦念。


そのどちらかに寄り切らず、

揺れたまま立っている感じに、

何度も救われた。



うつ病になって、

「強くなりたい」とは

思わなくなった。


ただ、

壊れずに生きていたい

と思うようになった。


この連作で書いた

「生きてるだけでハッピーな人が、生き残る」

という言葉は、

願望ではなく、

実感に近い。



AI時代は、

誰かの努力を否定するために

来るわけじゃない。


ただ、

無理を前提にした生き方を

少しずつ不要にしていく。


その変化を、

怖がる人もいるだろう。


でも、

疲れている人にとっては、

案外、優しい時代かもしれない。



この文章が、

未来を楽観させることはない。


ただ、

「そこまで絶望しなくていい理由」

くらいにはなれたらと思う。


読んでくれて、ありがとう。


そしてもし、

今、立ち止まっている人がいたら。


あなたは遅れているんじゃない。

少し早く、次の時代に触れているだけだ。

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AI時代の心の保ち方。未来不安を少しでも無くす のほほん村の尊重 @kosuke_skrr

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