第33話「深部」

 塔の廊下は次第に狭くなり、天井の光も弱くなった。

 壁の結晶が青白く微かに震え、風の神獣の力を意識すると、冷たくも心地よい気配が漂う。


「……空気が違うな」

ハルドが低くつぶやく。

 剣を握り、影に備える。

 俺も手に力を込め、赤と青、金の三神獣の力を体に巡らせる。


 奥から、黒い影の群れが這い出てきた。

 先ほどの複合体とは異なる、無数の小さな塊がひとつに集まるように動いている。

 足元の結晶に反射して、影は床いっぱいに広がった。


「リィナ、ノア、行くぞ!」

 俺は赤の炎の力を刃に纏わせ、目の前の影に切りかかる。

 金の風が腕を覆い、切っ先を加速させる。

 青の水の力が影の動きを封じる。


 リィナは軽やかに動き、二手に分かれた影を光で押さえる。

 女性らしい鋭さと柔らかさを併せ持つ光の動きは、まるで水面を滑る羽のようだ。

 ノアも小さな光を投げ、影の隙間を埋めて連携を助ける。


 影はまとまりを欠き、次第に光に吸い込まれるように崩れた。

 だが、広間の奥で新たな影の塊が生まれる。

 巨大な影の獣――塔に封じられた古の存在かもしれない。


「……これ、やばいな」

リィナが息を呑む。

 影は剣や光に反応して形を変え、目の前でうごめく。


 俺は赤の炎を中心に、金の風と青の水を組み合わせた三神獣の連携を試す。

 影の動きを読み、力を集中させると、刃の軌道が光の弧を描き、影の足元に衝撃波が走る。

 ハルドが盾で守りつつ、俺の攻撃を補強。

 ノアとリィナの光が影を封じる。


 初めての試みだったが、三神獣の力が互いに共鳴し、影の動きは鈍った。

 俺は息を整え、次の一撃に集中する。

 影は光の柱に吸い込まれるように崩れ、巨大な形も次第に輪郭を失った。


 広間には再び静寂が戻る。

 床の結晶は淡く光り、体に残る三神獣の力が、確かな存在感を示していた。


「……やったな」

ハルドが剣を下ろす。

 リィナは息を整え、髪を手でかき上げながら微笑んだ。

 ノアも小さく胸を張る。


 俺は三神獣の力を意識し、深く息をつく。

 まだ完全に制御できていない。

 でも、仲間と力を合わせれば、どんな影も恐れることはない――そんな自信が胸に芽生えていた。

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