第32話「三神獣」

 塔の最奥に進むにつれ、空気はますます重く、光の揺らめきが濃くなった。


 赤と青、金――三神獣の力が体に宿り、微かに震えている。

 手を広げると、力が指先から溢れそうで、胸の奥に熱い衝動が広がった。


「……こいつら、ただの力じゃないな」

ハルドが低くつぶやく。

 握った剣が微かに振動し、光の柱の残滓と共鳴している。

 古の英雄が使った剣――その力もまた、俺たちと呼応しているのが分かる。


 広間の影が一斉に動き出す。

 三体の黒い塊。

 赤や青、金の光を反射しながら、ゆっくりと迫る。

 今回は先ほどよりも素早く、鋭い気配を纏っていた。


「リィナ、二体を!」

「任せて!」

 彼女の声が軽やかに響く。

 光を操る手つきは迷いがなく、まるで水のように滑らかだ。


 俺は赤の炎の力を剣に纏わせ、目の前の影に斬りかかる。

 金の風が腕に巻き付き、切っ先を加速させる。

 衝撃で影が吹き飛び、床に光の痕が残る。


 ハルドは剣を振り、影の動きを制する。

 ノアも小さな光を飛ばし、影の足元を押さえる。

 三人と三神獣の力が一体となった瞬間、影は光に吸い込まれるように崩れた。


 しかし、広間の奥から新たな異変が起きる。

 結晶のひびが光を反射し、床が揺れる。

 影の残滓が再び集まり、巨大な形を作り上げた――複合体の影。


「……まだ、終わりじゃない」

リィナの声が震える。

 俺も息を整え、肩に力を入れる。

 赤・青・金の光が体を駆け巡り、自然と三神獣の意志が体に響く。


 俺たちは息を合わせ、三神獣の力を連動させる。

 赤の炎で攻撃、青の水で影の動きを封じ、金の風で速度を増す。

 光と光がぶつかり合う瞬間、影は歪み、次第に形を保てなくなる。


 ノアが声を張り上げる。

「兄ちゃん、今だ!」

 リィナも手を伸ばし、最後の力を集中する。


 影は光に吸い込まれ、砕け散った。

 広間は再び静けさを取り戻す。

 床の結晶が淡く光り、三神獣の力が体に残る。


「……やれたな」

ハルドが剣を下ろす。

 俺は肩で息をしながら、リィナとノアを見た。

 彼女たちの目には、疲労と共に自信の光が宿っていた。


 俺も小さく頷く。

 赤、青、金――三神獣の力は確かに俺たちのものだ。

 だが、それを制御し、活かすのはまだこれからだ。


 塔の奥に続く廊下。

 光と影、そして神獣の力を胸に、俺たちは一歩一歩、未来へ踏み出した――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る