第28話「光と影の試練」
広間を進むと、光の筋が複雑に交差し、まるで迷路のようになっていた。
「……迷いそうだな」
リィナが小声でつぶやく。
俺も頷く。
光は美しいが、同時に足を踏み間違えると危険な匂いを漂わせていた。
足元の結晶のひとつが、突然赤く光った。
瞬間、冷たい風が吹き抜け、床に影がうごめく。
黒い人影――ただの影ではない。
意思を持って俺たちを睨んでいるようだった。
「来たか……」
ハルドが低く息をつく。
剣を握り、影を睨みつける。
その気配に、俺も体が自然に緊張する。
影は動く。
床の結晶を踏み越えるたび、光と影がぶつかり合い、まるで戦場のように揺れる。
ノアが手を握りながら、怯えた声で言う。
「兄ちゃん……どうするの?」
「……行くしかない」
俺は答える。
恐怖はある。
でも、目の前の影がノアやリィナに襲いかかるのを待つわけにはいかない。
影が形を変え、二体に分かれる。
一体はリィナの前、もう一体は俺に向かってくる。
空気が震え、床の光が瞬く。
「ハルド、前に立ってくれ!」
俺は叫ぶ。
彼は軽く頷き、影に剣を向ける。
鋭い光の刃が、影を受け止める。
俺も体を動かす。
結晶の光を利用して、影の動きを封じようと試みる。
光が影に当たり、影は薄く揺れ、形が崩れる。
「……行け、ノア!」
俺は手を伸ばす。
小さな力でも、ノアと一緒に影を押し返す。
光と影がぶつかり合う感覚。
恐怖と興奮が入り混じる。
リィナも光を巧みに操り、影を押さえつける。
ノアの目が輝き、笑みを浮かべた。
「兄ちゃん……すごい!」
影が最後の力を振り絞るように暴れる。
でも、仲間と俺の意思がひとつになった瞬間、影は崩れ、光に吸い込まれた。
広間は再び静かになる。
床の光が揺れ、影は完全に消えた。
俺は深く息をつき、肩の力を抜く。
ノアとリィナも安堵の表情を浮かべた。
ハルドが剣を収め、俺たちを見渡す。
「……小手調べだ」
その言葉に、俺たちは頷く。
塔の試練は、まだ始まったばかりなのだ。
広間を抜ける先に、次の光の筋が伸びていた。
進む先には、さらなる謎と試練が待ち受けている――
でも、俺たちはもう怖くはなかった。
仲間と共に歩む覚悟が、胸にあったからだ。
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