第18話
通達は、即日だった。
――特別模擬戦を実施する。
――別枠管理対象の実力査定を目的とする。
形式は、シンプル。
対ペア戦。
相手は、学園が選抜した上位生徒二名。
個々の実力も、連携も、申し分ない。
観戦席には、教員が並ぶ。
これは訓練ではない。
確認作業だ。
「……やるしかない、」
エリオが、剣の柄を握りながら言った。
「うん」
セシルは、いつも通りだ。
「大丈夫。いつも通りで行こ」
その「いつも通り」が、
学園にとって一番の誤算だった。
開始の合図。
相手は、即座に布陣を組む。
前衛が圧をかけ、後衛が詠唱。
教科書通りの、最適解。
「……来るよ」
「うん」
セシルは、一歩も動かない。
代わりに、静かに息を整える。
「右、二秒後」
それだけ。
エリオは、反射的に動いた。
詠唱の起点。
まだ、魔法が形になる前。
剣が、そこを断つ。
「なっ――!」
相手の後衛が、息を呑む。
魔法は、不発。
だが、それは始まりに過ぎない。
「次、前衛。 踏み込み、深い」
エリオは、避けるのではなく、 半歩だけずらす。
相手の剣が、空を切る。
その瞬間。
「今」
――動きが、止まった。
相手の足元。
地形と魔力の流れを利用した、簡易拘束。
派手さは、ない。
だが、確実。
観戦席が、ざわつく。
「……もう一人」
セシルの声は、冷静だった。
逃げ道。
遮断。
選択肢を、潰す。
最後に残った生徒は、
動こうとして、気づいた。
――どこにも、行けない。
五分。
それで、終わった。
勝敗は、明白だった。
教員の一人が、言葉を失っている。
「……火力は?」
誰かが、かすれた声で尋ねた。
「使っていません」
「決定打は?」
「ありません」
ただ。
相手が、何もできなかった。
セシルとエリオは、中央に立っていた。
息も、乱れていない。
「……確認は、終わりましたか?」
セシルが、穏やかに言った。
挑発ではない。
本気の確認。
学院長が、ゆっくり立ち上がる。
「……ああ」
その声は、重かった。
「終わった」
学園は、理解した。
管理できない。
制限しても、意味がない。
力で縛ろうとすれば、
逆に、実力差が露わになる。
「……どうするんですか?」
誰かが、尋ねる。
学院長は、しばらく黙ってから答えた。
「干渉しない」
それは、敗北宣言だった。
演習場を後にしながら、
エリオが小さく言う。
「……終わった、のかな」
「うん」
セシルは、頷いた。
「少なくとも、学園の話は」
「じゃあ――」
言いかけて、止まる。
セシルが、先に言った。
「次は、卒業だね」
エリオは、苦笑する。
「……ほんとに、そこまで決めてるんだ」
「当然」
迷いなし。
「エリオ、置いていかないでね」
「……置いてかないよ」
小さく、でも確かに。
手が、触れた。
学園の中心で、
二人はもう、次の場所を見ている。
物語は、完全に彼らのものだった。
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