第7話
グランヴェル学園・戦術科会議室。
円卓を囲む教員たちの表情は、微妙に硬かった。
「――つまり、問題は“強さ”ではない」
最初に口を開いたのは、先日の記録を確認していたローディアスだった。
「セシル・アルノルトとエリオ・フェルナー。この二名は、評価基準に収まっていない」
「成績自体は、上位ではないはずだが?」
別の教員が端末を操作する。
「座学、可。実技、平均。ランク戦、参加率低」
「それが、ここ一週間のログだ」
ローディアスが投影したのは、ダンジョン記録だった。
討伐数。
被弾率。
魔力消費。
どれも、学年上位層に近い数値。
いや――
一部は、上回っている。
「……模擬戦で目立たない理由は?」
「“勝ち方”が地味だからだ」
ローディアスは即答した。
「派手な一撃はない。
だが、相手の選択肢を潰し続けている」
完全封殺。
その言葉が、誰の口からともなく浮かんだ。
「問題はそこだ」
年配の教員が、低い声で言う。
「彼らは、“対策される前提”で動いている」
新入生が、そこまで先を読むことはない。
普通は。
「学年上位……ハルト・ヴァイスとエミリア・フェルナーのペアと、どちらが上だ?」
沈黙。
誰も、即答できなかった。
「比較できない、というのが正しい」
ローディアスが言った。
「ハルトは火力と反応が優秀。エミリアは支援適性が高い。
だが――
守られる前提で組まれている」
それは、欠点ではない。
正統派だ。
だが。
「セシルとエリオは違う。 役割が固定されていない」
「交代可能、ということか」
「いや。最初から、“守る側と判断する側”が一体化している」
会議室の空気が、わずかに重くなる。
「……危険だな」
「強いから、ではない」
ローディアスは、はっきり言った。
「制御しづらい」
命令に従うタイプではない。
評価にも執着しない。
学園の外でも、通用する。
「では、どうする?」
しばらくして、結論が出た。
「ランク戦は予定通り参加させる」
「ただし」
「――別枠管理」
評価基準を分ける。
情報を集約する。
「観測対象として扱う」
その言葉に、誰も反対しなかった。
ローディアスは、最後に一文を記した。
〈対戦相手:学年上位ペア〉
それは、
“物語の正面衝突”を意味していた。
「……ようやく、表に出るか」
彼は小さく呟いた。
静かに育っていた違和感は、
もう、無視できる段階を越えていた。
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